ラッキンの前途は多難だ。アナリストらは販促費用の負担は今後も続くと見ている。なぜなら、顧客らはラッキンのコーヒーの安さに魅力を感じているからだ。事業を継続するのなら、資金を燃やし続けるしかない。
コンサル企業Kantar WorldpanelのJason Yuは「ラッキンの顧客はディスカウントがあるからこそ、コーヒーを買っている。会社が今後も存続できるかは疑問だ」と話した。
一方で競合らもコーヒーのデリバリーに注力を開始した。中国消費者のデジタル志向に合わせ、マクドナルドも昨年からMcCafeと呼ばれる宅配サービスを開始した。スターバックスもアリババのフードデリバリーEle.meを用い、同様のサービスを立ち上げている。
投資会社Kaiyuanのマネージング・ディレクターBrock Silversは、巨額な損失を生み出しながら上場を果たしたラッキンは、IPOによりって不釣り合いな額を調達したと指摘する。「仮条件の最低レンジでの上場だったとしても、ラッキンのIPOは問題を抱えていたはずだ」と彼は話す。
中国のコーヒー市場は4300億円
「彼らは収益化に向けての明確なビジョンを示せていない。現状のビジネスモデルは、コーヒーを売るごとに赤字を生み出している」
ラッキンにコメントを求めたが、回答は得られなかった。投資会社Joy Capital創業者のLiu Erhaiはフォーブスの取材に「ラッキンコーヒーは収益化よりも、スケールの拡大に注力している」と述べた。
ただし、ラッキンにとって好材料と呼べるデータもある。調査企業Mintelのデータでは、中国のコーヒー市場は年間12.3%のペースで成長を続け、2023年には43億ドル(約4700億円)に達する見込みで、成長余地は十分にある。
ラッキンは新たな売上の創出に向けてフードメニューの拡充や、紅茶などの新たな飲み物の提供を開始した。
「黒字化に向けて、ラッキンがとれるオプションは多い」とYuは話す。「ただし、彼らがまずやらねばならないのは、競合が真似のできないプロダクトを完成させ、規模の面でも他社を圧倒するスケールを実現することだ。そのためには迅速な意思決定と、巨額の資金が必要となる」