2輪車のドライバーらが、地図アプリを開く時間はわずか30秒だった。グーグルは彼らがより詳細なデータを得られるプロトタイプを製作したが、テスト結果は惨めなものだった。
「私たちは現地のニーズをうまく理解できていないことに気づいた」と、グーグルの2輪車プロジェクトを率いるLauren Celenzaは話す。
インドや東南アジアなどの新興国市場での支持拡大を目指すグーグルは、その後も試行錯誤を重ねた。その結果、2輪車のドライバーたちは乗車中に細かな道順の指示を、アプリから受けることを求めていないことが分かった。2輪車のドライバーらが求めているのは、旅を始める前に道路状況を正確に把握できるサービスだった。
Celenzaが率いるチームはその後、グーグルマップの「2輪車モード」を生み出した。2輪車モードではバイク専用に単純化された地図が表示され、目印を頭に入れた上で、目的地に出発できる。この機能は約1年半前にリリースされ、インドでのデイリーユーザー数は500万人に近づいた。
グーグルはこの機能を、十数カ所の新興国市場に広げようとしている。
2輪車モードはグーグル社内の「Next Billion Users」と呼ばれるイニシアチブの一貫で進んでいる。新興国市場をターゲットとした取り組みとしては、データ消費量が少ないグーグル検索やユーチューブなどもあげられる。また、インド市場に特化したデジタル決済アプリの「Tez」もある。
先日の開発者会議I/Oでグーグルは、新興国向けの複数のサービスを発表した。アンドロイドアプリを現金で購入できるソリューションや、新興市場向けの軽量版検索アプリ「Google Go」で利用可能な、テキスト読み上げ機能のデモも公開された。
「当社は今後、新興国のニーズに応える専用のアプリやサービスを拡充していく」とグーグルのNext Billion UsersチームのCaesar Senguptaは述べた。「やらねばならない仕事は、まだまだ多い」
中国版の検索エンジンには強い非難も
グーグルの各国での取り組みは、批判を浴びることもある。昨年8月にニュースサイトのThe Interceptは、グーグルが中国政府の検閲を助長する現地版の検索エンジンの開発を進めていると報道し、強い反発を浴びた。その後、グーグルは連邦議会で「中国で検索サービスを立ち上げる計画はない」と証言した。
さらに、今年の春にはグーグルやアップルがサウジアラビアで、夫が妻の行動を監視するアプリを野放しにしているとの批判が巻き起こった。男性優位社会であるサウジアラビアでは、結婚後の女性らが特定の行動に関し、事前に夫の承諾を得ることを要求されている。現地では夫らが妻の行動を合法的に監視できることになっており、グーグルは「アプリを削除すべきだ」という声を聞き入れず、アプリの公開を停止しなかった。
Senguptaは、グーグルが中国で進める「ドラゴンフライ・プロジェクト」にも関わっていると報道されている。彼は「今後も様々な意見に耳を傾けつつ、業務を推進していく」と述べた。
「世界は急速に進歩を遂げている。当社は、何が正しい判断であるのかを見極めつつ、プロジェクトを前進させねばならない」と、Senguptaは話した。