その目的をシンプルに整理すると、働き過ぎを防ぎ、労働者の健康を守りながらワークライフバランスを実現すること、とされている。
「24時間働けますか」というCMのコピーが流行した平成初期から、約30年で時代は大きく変化した。会社を成長させるために社員は馬車馬のように働いた(働かせた?)が、今は会社のための社員という発想では許されない。社員のための会社があるべきと言えるのではないだろうか。
まず、経営者ができること。それは生産性の向上である。ツールの導入や会議体の変更など、業務上で色々とできることはあるが、今回、あえて「食」に注目した。
世界保健機関であるWHO によると、「適切な栄養を摂取すると、平均よりも20%生産性を上がる」というデータが掲出されてからである。
特に少人数で経営から実務までこなすスタートアップやベンチャーにおいては、創業メンバーは生産性向上には欠かせない“人財”。距離が近いからこそ、食に対する管理やサポートも行き届くのではないだろうか。
改めておさらい。私たちが病気になるメカニズム
そもそも人はどのような流れで病気になってしまうのか。なぜ、体調を壊してしまうのか。
順天堂大学大学院医学研究科修了であり、博士(医学)の奈良岡 佑南氏はこう語る。
(奈良岡)病気の種類によっても理由は様々ですが、今回は活性酸素の存在についてお話しできればと思います。
この活性酸素が何者か。世間では一概に悪者扱いされていますが良い面も持っています。体内に侵入してきた細菌などを排除してくれるからです。
一方で、大量に生成されると細胞を酸化、つまりは錆びつかせ、動脈硬化・癌・老化の原因や、免疫機能の低下などを引き起こします。大量に生成される要因としては、ストレス、喫煙、食生活の乱れなどが一般的とされています。
細胞の錆びつきが日常の不定愁訴(肩こり・目まい・腰痛など、明確な原因がないのに体に不調を感じること)を生み出し、それが蓄積して病気に繋がると言われていますね。
運動や飲酒量を見直すことで活性酸素の増殖を防ぐことができるのですが、やはり食生活の見直しも大事です。
そして体調を崩してしまう、もう一つの原因が肥満です。メタボリックドミノという言葉が存在しているのですが、肥満があらゆる病気の入り口になっており、肥満から高血圧、脂質異常症、糖尿病、そこから透析や失明、脳卒中に繋がっていくわけですからね。
炭水化物と脂質の過剰“仕入”。バランスでコンディションは決まる
では、どのような食生活がベストなのか。どのような食生活であれば錆びないのか、太らないのか。その問いに対して、「とにかく栄養バランス!」と語るのが、BONIQのブランドオーナーである羽田氏。低温調理器具のBONIQを提供する企業の経営者であり、ダイエットアドバイザーでもある。
(羽田)自分のカラダを会社と例えてください。栄養素の仕入れがおかしい場合、“ジブン株式会社”の経営状態、健康状態は健全と言えないのです。炭水化物という部署は異常に黒字なのに、たんぱく質という部署が大赤字の人が多い印象ですね。
たとえば、コンビニ飯。僕も過去は多忙を極めた時期があり、普段はコンビニで炭水化物中心の生活。かつ、油っぽい肉が嫌いで肉を食べるのは月に1,2日ほどでした。
これだと当然、たんぱく質が不足します。そしてもう一点。外食中心だと、脂肪酸のバランスが偏っていたのです。
この脂肪酸とは炭水化物・たんぱく質と並ぶ 3大栄養素の一つです。
肌の調子を整えたり、免疫を整えたりと、健康維持には必須なものです。オメガ3、オメガ6、オメガ9と種類が存在するのですが、コンビニのご飯や飲食店の油は状態が維持しやすいオメガ6が基本。この3つをバランスよく摂取しないといけないのですが、コンビニ飯や外食ばかりだとオメガ6の過剰摂取になり、結果、肥満に繋がってしまいます。
街で仕入れる食品は基本、炭水化物ですし、糖質も過剰に。脂質の割合がおかしくなり、たんぱく質も不足、結果、僕もずっと体調が悪い日々が続いていました。
最近、栄養失調という言葉を聞かなくなったと思いますが、実は『隠れ栄養失調』の症状をもつ人が存在しているのです。パフォーマンスに影響があり、キレるビジネスパーソンが増えていると言われているのですが、僕もその一人だったと思いますね。
たんぱく質の摂取目標は、体重×1~1.5g。これは辛い......何か方法はないか。
脂肪酸については、意識的に魚を摂取する、または亜麻仁油やエゴマ油をサラダなどにかけて摂取すればクリアできる。
では、たんぱく質はどうか。
実はたんぱく質の摂取は意外と難しい。1日の摂取目標は、その人の体重×1〜1.5gと言われている。つまり、60kgの人間であれば、60g〜90gを摂取しなければならないのだ。
じゃあ、90gの肉を食べればいい、という発想になると思うがこれまた難しい問題が。肉や魚の場合、摂取量の20%しか、たんぱく質が取れないと言われているのだ。つまり、300gの肉を食べて、初めて1日の摂取目標を超えるのだと言う。
羽田「毎日ステーキを食べるわけには流石に苦しい。だから僕は低温調理に活路を見出したんです。安い肉でも限界まで柔らかくなるから、噛むことによる満腹感を得にくい。つまりは安いお肉でも美味しくたくさん食べられるから、この器具には可能性があるなと思ったのです」
もちろん低温調理だけで1日の摂取目標量をまかなえるとは思えない。こまめなプロテイン摂取もそうだが、たんぱく質は摂り“すぎる”くらいの意識で良いのではないだろうか。
心はもちろん、連日続く、飲み会や会食から解放された、少々長めのゴールデンウィーク。これを機に、長期休み明けの食生活を見直し、パフォーマンス向上に努めてみてはいかがだろうか。
文:後藤 亮輔