激しいブリザードが吹きつける山頂付近の気温は、マイナス45度以下になることもある。かつてはマッキンリーと呼ばれたこの山では、毎年4月から7月の時期に1000人近くの登山者が、平均2週間をかけて頂上を目指すことになる。
ここで問題となるのが、登山者が山に残す排泄物の問題だ。人糞などの排泄物の量は、年間2トンにも及んでいる。デナリ山の頂上付近では、過去数十年に渡り、氷の中に保存された人糞が残り続けていた。
1970年以降にデナリ山に残された人糞の量は推定66トンに達し、登山ガイド企業は今年から自発的に人糞を持ち帰ることを決めた。デナリ国立公園管理局も、約4267メートルより下のゴミは山の下まで持って出なければならないというルールを施行した。
しかし、近年問題となっているのは、気温の上昇により、過去に残された凍った人糞が急速に溶け出していることだ。以前から、凍った人糞を気温の高い地域まで下ろし、自然に分解させる試みが続いていたが、気温の上昇は予想以上のスピードで進んでいる。
アラスカ州では、米国の他の州よりも約2倍の速度で温暖化が進んでおり、氷が溶ける速度も増している。
氷河学者らは今後の数年で、氷に閉じ込められた人糞の溶解が進むと指摘する。そこで問題となるのは悪臭だけでなく、デナリ国立公園の自然のエコシステムが破壊されてしまう可能性だ。