ビジネス

2019.04.18

マッキンゼーからウォッチ業界へ、広い視野で切り開く「時計の未来」とは

ジョフロア・レフェーヴル

伝統を重んじるスイス時計業界では、今でも時計業界で育った「時計人」を好む傾向にあった。しかし変化するラグジュアリービジネスでは、大局に立つ視野を持った人物が必要となりつつある。


2014年をピークに、スイス時計の生産本数は減少傾向。時計の単価が上がっているので、売り上げは伸びているが、これ以上成長するためには、新しい考え方が必要になるだろう。その象徴がボーム&メルシエと、それをけん引するCEOジョフロワ・レフェーヴルである。

グランゼコールを卒業したのちにマッキンゼー・アンド・カンパニーで経験を積み、その後時計業界へと転身してきた彼は、いうなれば“生粋の時計人”とは違った視野を持っている。

「人々はスイス時計に、付加価値を求めています。ボーム&メルシエは10万〜40万円という価格帯に強みを持っていますが、それはマーケティングの賜物ではない。我々は1830年に創業して以来、“妥協なき時計づくり”を求め続けてきた。その思想を語るのが、極めて優秀なムーブメント『ボーマティック』であり、信頼性や使い勝手を高めることで“理想的な時計とはこうあるべきだ”と語り掛けるのです」

さらにボーム&メルシエでは、ミレニアル世代をターゲットにしたインターネット販売のみのカスタムウォッチブランド「BAUME(ボーム)」を立ち上げ、時計との新たな楽しみ方を提案する。

「現代の親子間は、人類史上最もギャップがある世代ではないでしょうか。私たちは親から多くを学びましたが、今はSNSなどのテクノロジーについては子どもから学ばないといけない(笑)。時計をつける習慣がないこの世代に興味を持ってもらうには、彼らに寄り添い、サスティナビリティやパーソナライゼーションなど、彼らの価値観を刺激する提案しなければいけないでしょう」

高級時計ビジネスは、感性を共有することから始まる。そこに理論の裏付けがあれば、その価値をもっと明確に伝えることができるのだ。


耐磁性能、5日間ロングパワーリザーブ、COSC認定クロノメーターの高精度、そして5〜7年ごとのメンテナンス期間という優れた実用性を備えるムーブメント「ボーマティック」を搭載するドレスウォッチ。今年は青のグラデーション文字盤を採用し、上品さが増している。[自動巻き、SSケース、ケース径40mm 33万5000円(9月発売予定) ボーム&メルシエ 03-4461-8030


ジョフロワ・レフェーヴル◎ボーム&メルシエCEO。エコール・ポリテクニークとテレコム・パリを卒業後、インシアードでMBAを取得。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、リシュモン入社。ジャガー・ルクルト副CEOを経て、2018年6月より現職。

文・構成=篠田哲生

この記事は 「Forbes JAPAN プリンシプル・カンパニー」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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