2014年をピークに、スイス時計の生産本数は減少傾向。時計の単価が上がっているので、売り上げは伸びているが、これ以上成長するためには、新しい考え方が必要になるだろう。その象徴がボーム&メルシエと、それをけん引するCEOジョフロワ・レフェーヴルである。
グランゼコールを卒業したのちにマッキンゼー・アンド・カンパニーで経験を積み、その後時計業界へと転身してきた彼は、いうなれば“生粋の時計人”とは違った視野を持っている。
「人々はスイス時計に、付加価値を求めています。ボーム&メルシエは10万〜40万円という価格帯に強みを持っていますが、それはマーケティングの賜物ではない。我々は1830年に創業して以来、“妥協なき時計づくり”を求め続けてきた。その思想を語るのが、極めて優秀なムーブメント『ボーマティック』であり、信頼性や使い勝手を高めることで“理想的な時計とはこうあるべきだ”と語り掛けるのです」
さらにボーム&メルシエでは、ミレニアル世代をターゲットにしたインターネット販売のみのカスタムウォッチブランド「BAUME(ボーム)」を立ち上げ、時計との新たな楽しみ方を提案する。
「現代の親子間は、人類史上最もギャップがある世代ではないでしょうか。私たちは親から多くを学びましたが、今はSNSなどのテクノロジーについては子どもから学ばないといけない(笑)。時計をつける習慣がないこの世代に興味を持ってもらうには、彼らに寄り添い、サスティナビリティやパーソナライゼーションなど、彼らの価値観を刺激する提案しなければいけないでしょう」
高級時計ビジネスは、感性を共有することから始まる。そこに理論の裏付けがあれば、その価値をもっと明確に伝えることができるのだ。
耐磁性能、5日間ロングパワーリザーブ、COSC認定クロノメーターの高精度、そして5〜7年ごとのメンテナンス期間という優れた実用性を備えるムーブメント「ボーマティック」を搭載するドレスウォッチ。今年は青のグラデーション文字盤を採用し、上品さが増している。[自動巻き、SSケース、ケース径40mm 33万5000円(9月発売予定) ボーム&メルシエ 03-4461-8030]
ジョフロワ・レフェーヴル◎ボーム&メルシエCEO。エコール・ポリテクニークとテレコム・パリを卒業後、インシアードでMBAを取得。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、リシュモン入社。ジャガー・ルクルト副CEOを経て、2018年6月より現職。