ビジネス

2019.04.18

特許庁がスタートアップ支援を強化 デモデイで明かされた知財戦略を持つべき3つの理由

写真:Koichiro Akiyama

特許は気になるトピックだが、知財戦略構築の必要性を感じていても実行に移せていない、そもそも何から始めれば良いかわからないというスタートアップは多いのではないか。

そんな状況に一石を投じるべく、特許庁は2018年7月からスタートアップ支援チームを発足し、スタートアップ向けの特許施策を強化している。

特許施策の短期集中の取り組みとして、特許庁から委託を受けたデロイトトーマツベンチャーサポートによりIPAS(IP Acceleration program for Starups)というアクセラレータプログラムが運営されている。

2019年3月14日にIPAS Demo Dayが開催され、3カ月のメンタリング期間の成果が発表された。

IPAS Demo Dayで登壇した特許庁長官 宗像直子は「第1期で採択されたスタートアップが世界で活躍するユニコーンになることを期待してる」と意気込んだ。

宗像によると2019年4月中に公募を開始する予定の第2期では、採択企業数を5社増やし15社とする予定だという。特許庁の精鋭が集まり、スタートアップ支援を強化しているのだ。

IPASプログラムは起業家と知財やビジネスメンターと特許メンターががチームを組み、特許戦略をブラッシュアップすることを目指す。同プログラムデモデイに登壇した特許庁企画調査課課長補佐の貝沼憲司氏は「知財は、スタートアップの必須ツール」と話す。

知財が必須ツールの理由として、独占、連携、信用の3つのキーワードが列挙された。独自技術やビジネスによる事業の差別化、事業提携などのオープンイノベーションのツール、資金調達やM&Aの評価など、知財戦略を適切に使うことにより事業スピードを加速する可能性が高まるのだ。



IPAS Demo Dayに登壇したDeepFlow代表取締役社長 深川宏樹は「メンタリングを通じて、ビジネスモデルをブラッシュアップできた。またパートナー企業を紹介してもらうなど強力なサポートを得た」と話した。

3月のデモデイを見据え、月数回の打ち合わせで認識された課題にスピード感を持って取り組み、次々に決断を下す3カ月間に確かな手応えを感じたようだ。

Jiksak Bioengineering代表取締役 川田治良氏は「研究者集団ばかりの会社メンバーがビジネスや知財を考える良い機会となった。実質3カ月ほどで短かったので、来期も応募したい」と笑みを見せた。

IPASに選抜された起業家はそれぞれのゴールに向かって一丸となって取り組めるビジネスや知財の専門家であるメンターに出会い、アドバイスを受ける。知財戦略構築に集中的に考える実り多い期間となったようだ。

そうは言っても知財活用の目的方法について明確なイメージが湧かないスタートアップ向けには、特許庁は事例集『一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略 事例集』をホームページにて公開している。

『一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略 事例集』ではIT、電気一般、化学、バイオと様々な業種、シードからレイターステージに渡る様々な事業ステージでベンチャー企業が直面した課題と知財活動のポイント、知財体制構築などが紹介されている。



特許ポートフォリオを構築することにより大企業との事業連携に繋がったカブク、テクノロジーを軸とした独自性・競争力の強化のため、業界初のシステムを導入し特許を取得したOne Tap BUYなど計18社の事例に基づいた示唆に富む事例集となっている。

IPAS第2期の募集は2019年4月中に公募を開始する予定だ。

文=森屋千絵

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