「デジタライゼーション、エレクトリフィケーション、そしてキャピタライゼーションが、いま社内の3つの重要なプラットフォームです」
そう語るのは、フォルクスワーゲン(VW)の最高戦略責任者、ミヒャエル・ヨースト氏だ。
3月にジュネーブで開催された国際自動車ショーで私は、VWの首脳陣の考えを直接聞く機会に恵まれた。企業の将来の舵取りという重要なポジションのヨースト氏はそのひとりである。
ヨースト氏のあげた三つのキーワードの意味
デジタライゼーションとは通信技術の積極的な採用を意味している。スマートデバイスを使って車両のデータが取得できたり、近い将来にはアマゾン・アレクサのようなスマートスピーカーを介して、自宅にいながら「どこどこに行きたいんだけど道順を」などカーナビゲーションの設定が行えるようになるという。
エレクトリフィケーションは、最近、自動車メーカーのプレスリリースでは見慣れた感すらあるEV化のことだ。VWは有言実行だ。2019年内に「ID.(アイディー)」という新世代の電気自動車の発表を予定している。グループ内ではアウディがいち早く「e-tron(イートロン)」を発売した。
キャピタリゼーションは、(ある分野に集中的に)資本を投下すること、と私は解釈している。
例をあげると、今年2月にVWのCEOを務めるドクター・ヘルベルト・ディースは、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOと共同記者会見を開いた。
シアトルに法人を設立し、両社で「Volkswagen Automotive Cloud」を開発すると発表したのだった。ベルリンでは、地元のスタートアップと組んで都市生活者のユーザーが恩恵を受けられる通信によるカーシェアリングなどのサービス(それをVWでは「デジタル・エコシステム」と呼ぶ)の実験が始まる。
ドクター・ディースはVWを、カーマニュファクチャラーでなく「モビリティ・プロバイダー」と呼ぶ。デジタルエコシステムや車両のネットワークを開発しながら、ソフトウェア重視の自動車会社へと「進化」していくというのだ。