米経済に広がる「独占」が問題である理由

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米国はいつの間にか、独占企業の国になっていた。国内経済のうち成長を続けているのは、ほとんど競争にさらされていない一握りの企業に「占有」されている分野だ。

こうした企業には、より良い製品の提供や効率の向上への動機になるものがない─真の資本主義が根付いていれば、こうしたことは起きていないはずだ。

どの業界を見ても、米国は独占企業の国になっている。

3社がモバイル通信市場の約80%を支配している。また、クレジットカード市場の95%は3社が占め、航空市場では4社が国内便の70%を運航。検索サービスは60%をグーグルが提供している(英誌エコノミストより)

4社がブタの66%、肉食牛の85%、ニワトリの50%の食肉処理を行っている(2015年時点、オープン・マーケット・インスティテュートより)

4社がトウモロコシ種子の売上高の85%、ダイズ種子の売上高の75%を占めている(米農務省より)。さらに、(農作物種子を扱う)米国企業のデュポンとモンサントは、その他のどの企業よりもはるかに大規模だ。

企業は通常、競合他社より低価格でより良い製品を提供することによって利益を増やす。これは、競合する各社のいずれかが脱落し、新たな競争相手が登場し続けるというダイナミックなプロセスだ。

経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは、これを「創造的破壊」と呼んだ。厳しい表現だが、経済成長のためには不可欠なものだ。しかし、その創造的破壊は現在、起きていない。そして、企業が死を拒み、独占する者たちが向上を拒む中、緩やかな経済成長さえもが困難になっている。

非創造的な破壊

創造的破壊が起きることは、企業が廃業に追い込まれ、労働者が失業することを意味する。最終的には新たに登場した競争相手がこれらの労働者を雇用するだろが、失業に苦しむ人たちが出るということだ。

政治家らはこうした状況を何とかしようとするが、適正なバランスを見つけることは難しい。これに関して現在、主に責任を負っているのは中央銀行だ。米国の連邦準備制度だけではない、各国の中銀だ。
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編集=木内涼子

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