ビジネス

2019.03.29

旅するように働く部長が伝授する越境イノベーションのつくり方

パソナ ソーシャルイノベーション部長 加藤 遼

Forbes JAPAN 5月号(3月25日発売)では、多拠点生活や新しい働き方などを通じて地域活性に挑戦する「越境イノベーター」にフィーチャー。そのうちの一人が、全国の各地域で様々な取り組みを推進しているパソナ ソーシャルイノベーション部長の加藤遼だ。「旅するように『はたらく』部長」という肩書をもつ加藤に、越境イノベーターとして地域に貢献するためのポイントを聞いた。


──はじめに、パソナグループでは、地方でどのような取り組みをしているのか教えてください。

「地方に夢のある産業を創る」をコンセプトに、自治体や企業、NPO、住民と連携しながら新規事業に取り組んでいます。東京など都会のビジネスをそのまま地方に持ち込むのではなく、その地域独自の文化や歴史、食、自然などを生かして、持続可能なビジネスをつくっていくのが基本方針です。

例えば、兵庫県淡路島では、廃校になった小学校をリノベーションして、地元の新鮮野菜やお土産の販売のほか、地元の食材を使ったレストラン・カフェなどが楽しめる「のじまスコーラ」を運営しています。また、県立公園を活用し、自然と二次元コンテンツを組み合わせたアニメパーク「ニジゲンノモリ」を2017年に開設しました。

同園では、人気アニメ「クレヨンしんちゃん」をテーマにしたアスレチックや、夜の森をプロジェクションマッピング等で演出し、神秘的な世界を体験できる「ナイトウォーク火の鳥」が楽しめます。

──加藤さんは活動のなかで、地方で活躍するイノベーターとも積極的に交流しています。最近のトレンドをどう見ていますか。

日本全国に「すごい」イノベーターが増えてきたと実感しています。地域に入って現地の住民や企業、行政とネットワークをつくり、それぞれが抱えている課題やビジョンを把握したうえで、自分のやりたいことと掛け合わせて貢献している人が実に多いです。地域を活性化したいという思いはもちろんですが、それだけでなく地方から新しい社会や経済をつくりたいというイノベーターも多い印象を受けています。

──彼らのように地方で活躍したいと考える若者も増えていますが、イノベーターとして地域に貢献していくためには、まず何から始めたら良いのでしょうか。

まず、実際にイノベーションを起こしている人たちに会いに行くことをお勧めします。地域の暮らしや魅力を肌で感じながら、彼らが目指すビジョンや取り組みを学び自分の糧にするのです。実際、地方に移住したい、地方で起業したいと検討している若い人から相談された時、僕は真っ先に知人のイノベーターを紹介しています。

僕がいろいろな越境イノベーターと会って感じるのは、彼ら自身が地域へ入り込んだきっかけが、ほとんど「人」だったということ。その地域が面白いからではなく、特定の誰かに魅力を感じて、その地域に入り込んでいるのです。

そこでは、魅力的な人たちがお互いを引き寄せあって、自然とイノベーターのコミュニティが醸成されています。彼らは、現地の住民や企業、行政、NPOをつなぐ「ハブ」の役割を果たしていることも多いので、そこから地域の事情を把握していくことができます。

──魅力的な人物をきっかけとしつつも、地域の特徴を理解することが大事なのですね。

そうですね。人に会うことに加えて、僕がプロジェクトをつくるときには、その地域の歴史や文化、地理などを文献で調べたり、自治体の地方創生戦略などもチェックしたりしています。時には、民泊も使います。昔からその地域に住んでいる方が運営していることが多くて、有益なお話が聞けますから。

そうやって、地域の事情をしっかりと把握し、自分の強みとの親和性を図りながら道を模索していくのです。すべてを入念に調べることは簡単ではないですが、できる限りやっておくほうがよいと思います。移住してみて「やっぱり違うな」と感じては遅いですからね。

それでも、実際に活動する際は、必ず課題にぶつかりますし、その都度乗り越えなければいけません。そこでもイノベーターのコミュニティは役に立つでしょう。迷った時に助けてくれる場所があるかないかで、活動を続けられるかどうかは大きく変わります。
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文=眞鍋 武

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