2014年に〈ゼニス〉の新CEOに就任したばかりのアルド・マガダが、この日身に着けていた時計は「エル・プリメロ クロノマスター 1969」だった。「この時計には2つの特徴があります。1つはダイヤルに時計の心臓部ともいうべき脱進機を見せるオープンデザイン。これは2009年までゼニスを率いた前々CEOのアイデアです。もう1つの特徴である1969年当時のアイコンカラーを復活させたのは、前CEOのジャン=フレデリック・デュフールでした。この時計は、彼らが築いた21世紀のゼニスを象徴するモデルなのです」
それを愛用するのは、ふたりからゼニスを受け継ぎ、存続させていくという意思の表れなのだろうか。「確かに彼らは、特徴的な一時代を築きました。と同時にゼニスは、長い歴史のなかで揺るぎない価値を育んできました。その価値を守り、進化させることがCEOの重要な任務だと、私は考えています」
ゼニスの揺るぎない価値とは、自動巻きクロノグラフムーブメントの傑作エル・プリメロを筆頭とする自社製ムーブメントと、それを進化させられる優れた技術力にある。「機械式時計は、何十年経っても、その価値が失われない存在であるべきです。50年後も生き続け、価値ある時計をつくり続けることがゼニスの使命。そのためには革新性も大切です。そして伝統的な職人技術を受け継ぐことも重要で、人材育成は欠かせません。優れた人材を揃え、育て、素晴らしいチームをつくり上げることが、ゼニスを未来に存続させる唯一の手段です」
ゼニスは、2015年に創業150周年を迎える。準備は進んでいますか?と問うと、「楽しみにしていてください」と、即答した。そして「周年だといって、焦って開発を進めたりはしません」と言葉をつなぐ。「我慢強く開発を進められることが、昔からのゼニスの強みです。例えばエル・プリメロは当初、創業100周年の1965年に発表される予定でした。しかし実際に発表されたのは69年。ベストの状態になるまで4年我慢したのです。改革を足早に進めず、最高の製品を届けるためのトライを恐れず続ける。そしてトライをしたうえでの失敗に対し寛容なことが、ゼニスのCEOには求められます。150周年のための記念モデルは用意します。しかしそれは通過点。私たちはさらなる革新を我慢強く続けていきます」
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