フェイスブックが決済やEコマースに注力することは、中国のWeChatの模倣とも受けとめられている。同社の決断は、米国企業による中国のイノベーションのコピーの新たな一例といえるだろう。
今から十数年前に中国の人人網(レンレンワン)はフェイスブックを真似したSNSを始動させたが、今ではフェイスブックが中国を真似するポジションになったのだ。
中国のモバイルアプリは西側のアプリよりも、コンテンツやソーシャル機能、Eコマースの充実度で先を行っている。WeChatは買い物を便利にし、決済手段として使えるSNSで、アプリの機能的にフェイスブックを上回る。
テンセントが誇る、スーパーアプリであるWeChatの利用者は10億人を超えている。また、決済機能のWeChatペイの利用者は約9億人で、銀行口座やクレジットカードと連携させたモバイル決済が可能だ。
WeChatには2017年1月にミニプログラム機能が追加され、コンテンツとEコマースをダイレクトにつなぐ、ミニショップも始動した。中国が世界に先駆けて導入したSNSのマネタイズ手段であるミニショップの利用者は、その後の2年で2億人に到達した。テスラやウォルマートも既に、WeChatでミニショップを開設している。
ミニショップではEコマースはもちろん、位置情報と連携したデリバリーやレンタルサイクルの手配も可能だ。
WeChatは現時点では米国市場に関心を示しておらず、フェイスブックにとってこれはチャンスといえるだろう。米国内でもWeChatをコミュニケーションに用いることは可能だが、決済が利用できるのは中国の銀行に口座を持つ人に限られている。
フェイスブックが中国企業のイノベーションを模倣するのは、これが初めてではない。フェイスブックは昨年、TikTokを真似たアプリ「Lasso」を米国向けにリリースした。中国のメディアはLassoについて「フェイスブックによる100%のパクリアプリだ」と書いていた。