ビジネス

2019.03.11

「幸せな家族を守りたい」痛くない乳がん診断を実現

Lily MedTech 代表取締役社長 東 志保

乳房を上下の板でぎゅうぎゅうと挟み、X線で撮影するマンモグラフィー検査。薄く広げてしこりを発見しやすくするのだが、その痛みで泣いてしまう女性もいる。乳がんは早期治療で5年後の生存率は約9割。検診による早期発見が肝心だがマンモグラフィーは被ばくや一部痛みが生じ、エコーは見落としが起きやすいなど課題が多い。

東志保のLily MedTechは乳がん用診断装置を開発する東大発ベンチャー。夫で同大教授の東隆らが開発した超音波振動子を使い、痛みがない検査を実現。乳房部分に穴が開いた台に受診者がうつ伏せになり、リング状になった約2000個の素子で均質に診断できる。

東の母親が脳腫瘍で亡くなったのは高校生の時。家族の中心だった母親の闘病で生活は一変。ショックで何が起きたのか、大人になっても消化しきれなかった。夫の開発した診断機器で多くの女性を救えるかもしれないと知り、母親のことを思い出した。「経営経験はゼロで、直前まで社長になるなんて想像もできませんでした。でも幸せな家庭を守りたいという熱意なら誰にも負けません」。


あずま・しほ◎1982年東京都生まれ。電気通信大学卒、米アリゾナ州立大学修士課程修了。2016年5月Lily MedTechを創業。NEDO STS助成事業やAMEDなどに採択。Beyond Next VenturesやJSTなどから3億5000万円調達。

文=成相通子 写真=帆足宗洋

この記事は 「Forbes JAPAN ニッポンが誇る小さな大企業」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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