世界では市場価値の高いアート作品を「ディフェンシブな資産」として保有する文化が定着しているが、日本でアート作品を購入する人は限られた一部の人のみである。
実際、2017年度の世界の美術品市場における市場規模が約7兆円あるのに対し、日本における割合はわずか2.8%の約2003億円(UBS調べThe Art Market 2018、一般社団法人アート東京調べ「日本のアート産業に関する市場レポート 2018」より)。
特に高額なアートを保有するためには、購入資金やスペースの確保に加え、継続的な維持費が必要となる。何が「良いアート」なのかもわかりづらく、興味はあっても、アートを購入することを縁遠く感じている人は多いのではないだろうか。
アート購入を身近なものに
「アートを購入する」体験をもっと気軽なものにしたい。そんな想いから3月6日に誕生したのが「ARTGATE(アートゲート)」。日本初の、アート作品を共同保有することができるプラットフォームサービスだ。
昨日から事前登録を開始し、初回のオーナー権販売は4月中を予定しているという。ARTGATEにはサーバーエージェントの藤田ファンドが出資。そのほか見城徹、石田健、小松周平、中川綾太郎、和田修一が個人でも出資している。同サービスに対する期待を、藤田晋はこう語る。
「藤田ファンドでは若手経営者への投資と、元サイバーエージェント社員への投資という二軸で現在投資しています。今回の出資は、松園さんを代表とする元サイバーエージェント社員2名での起業です。アート市場に対し新しい概念を体現するチャレンジングな事業内容に魅力的を感じ、応援することにしました」
ARTGATEは目利きのあるアートリーダーが、国内外の優れたアート作品を選定。アートの価値を「オーナー権」として少額から購入し、共同保有することができる。気に入った作品の「オーナー権」を保有した人に対しては、作品鑑賞の機会はもちろん、クローズドな展示パーティーに参加できるなどの優待が与えられる。「オーナー権保有者の交流の場も作れたら」とARTGATE代表取締役社長の松園詩織は語った。
選定されるアートには、資産としての将来性があることはもちろん、空間を丸ごと楽しめるものなど、個人所有が難しい、ARTGATEだからこその作品も数多く提供される予定である。
また、同社は「アート x テクノロジー」の取り組みも強化していく予定だという。ブロックチェーンを用いることで、作品の来歴や真偽の透明性を高めることができる。
また、今後は今なぜこのアート作品、このアーティストが評価されているのか、といった情報を独自のアルゴリズムで参考データとして客観的に示すことでアートの「わかりづらさ」を解消する助けができるかもしれないという。
確かにアート作品は、一部の人しか手に入れることができないからこそ、その人たちを惹きつけているところがあり、説明しがたい「わかりづらさ」を良いものとする考えもある。しかし、アート作品を保有することに対してお金を払う文化が、日本にもしっかりと根付けば、将来のアーティストを育てることにもつながるのではないか。アートに精通した人が増えることで、日本のアート市場はさらに拡大していくことだろう。
「ARTGATE」サービスの提供開始によって、アート購入への「GATE」がより多くの人に開かれ、ゆくゆくは、日本が「アート大国」と言われるような未来が訪れたら素敵だなと、筆者は思った。