ビジネス

2019.02.28

目を背けてはいられない マーケティングの「不都合な真実」

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よほどのデジタルデトックスでも覚悟しない限り、消費者にできることはあまりない。一方で企業は、生き残りのためにはパーソナライズの波に乗っていくしかない。では、この不平等を打破するために何が必要だろう?

まず手っ取り早いのは規制、インプットデータに関する規制とアウトプットの使い方の規制だ。EUがGAFAをターゲットにしてつくったといわれるGDPR(EU一般データ保護規則)はまさに情報を個人に取り戻すという考え方で導入されている。始まったばかりのこの規制で、何か変わるところは多少なりともあるのか、引き続き注目すべきだと思う。

ただ、やはり規制だけしても、抜け道は考えられる。それに、不平等かもしれないけれど、データを提供することで個人も少なからず便利になっているので、規制だけではうまくはいかないだろう。

不平等の元は、データが安く、ともすると無償で、企業に渡っているということだ。それならば、自分のデータが生み出す対価が受け取れればいいのではないか。データが使われるたびに適切なお金がきちんと手に入る、そんな仕組みになっていればいいのではないだろうか。

そこで、私が面白いと思っているのが「情報銀行」という考え方だ。個人情報を貯金して、その利用に対して適正な対価を権利として受け取ることができる銀行である。いったんこの仕組みができれば、万が一政府が個人データを手に入れようと思っても、預金をいきなり盗むことはできないし、安全なのではないだろうか。

実は、そんな検討を実際に日本の大手銀行が始めている。いわば「個人情報銀行」で、この技術には、ブロックチェーンなどが使えると考えられているそうだ。

これまでにアマゾンのレコメンドで彼らは何兆円儲けたのだろう? PayPayは200億円キャンペーンで集めたデータでこれから何兆円儲けるのだろう?

その原資はすべて、データを渡してきた私たちだ。今は、企業がちょっとした便利さやお得感をニンジンにして、簡単に入手した個人データを使って莫大なお金を稼いでいる。この不平等はほんとうに、マーケティングの「不都合な真実」だ。

第4次産業革命は始まったばかり。規制と情報銀行だけでうまくいくとは思わないけれど、時間がたつにつれて、産業革命後に労働者の権利が認められていったように、だんだんと是正されていくのだろう、と考えている。

文=武井涼子

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