水上真氏、51歳。25歳でオリコングループの取締役統轄担当に抜擢され、同社のJASDAQ上場に貢献した。2001年にはアスキー系の映像コンテンツ会社ウェブストリームの社長に招へいされ就任。いち早くストリーミング動画事業の開発に乗り出した。
日本コロムビアでは13年間、執行役員として制作・宣伝部門を統括しつつ、戦略事業担当やコロムビアマーケティング社の取締役も兼任、同時にフジサンケイグループのグループ企業の取締役も務めてきた。また日本最大級の芸能プロダクション、オスカープロモーションでも宣伝部門を管掌、日本コロムビアを退任後はMXテレビの編成局企画マーケティング部長に就任した。
そんな水上氏は今、異なる業種の「医療」に挑んでいる。2017年12月より、田園調布耳鼻咽喉科医院のCEOとして、日曜終日診療や早朝夜間診療、数少ない小児耳鼻咽喉科の拡充など、患者のニーズを重視した事業経営に取り組み実績を出し注目を集めている。
なぜ、エンタメ業界でコンテンツマーケティングを極めた人物が、医療経営の道へと進んだのか。水上氏のキャリアを紐解いていくと、事業立ち上げのプロフェッショナルになるためのヒントが見えてくる。
新入社員でいきなり新規事業立ち上げ
水上氏のキャリアは、新入社員で入った金融機関で、いきなり新規事業の立ち上げ・推進に加わったことから始まる。
「1990年代前半、金融商品がフリーレートプランとなり、各社の料金が変わるという『新種元年』でした。海外保険など幅広い商品をたくさん集めて、それを集約したものを『新種』と呼んでいたのですが、その商品も、提案する方々に応じて価格が変わる大変革期でした。
フリーレートプランで顧客に提案したり、彼らのニーズを考えたりと、自分の企画提案能力が毎回問われました。そして、スピーディに提案し、対応していくスキルも鍛えられましたね」
分からないなりにも、自分の手で市場を創造した経験、そして企画提案能力、スピーディに対応する能力が身についた中で、水上氏は、事業には実行力が必要だと考えるようになる。
「自分は実行力で動くタイプで、新たな事業を回す側なんだと、そのときにわかったんです。年齢も若かったですから、自分で動いて結果を出さないと人は付いてきませんし。そして企業は生き物ですから、誰かが創ったものに追随することも必要ですが、新たなものを創り出していくことに挑戦する方が向いていたんですね。苦労の連続でしたが……」
エンタメ業界への転身、オリコンへ 25歳で取締役に
キャリアアップを図ろうとした水上氏が次に考えたのは、エンタメ・メディア業界だった。
「もともとエンタメ・メディア業界に興味があったのですが、全くの異業種に転身する不安はありませんでした。事業立ち上げを担わせてもらった経験は、エンタメ業界であっても生きると思っていたからです。ビジネスのベースは一緒ですから」