エンタメから医療へ。業界に通底するポリシーとは
コロムビアで十分にやり遂げたと実感した水上氏は、次の道を模索する。
「いろんなお声がけをいただきましたが、斬新な編成をしているテレビ局のTOKYO MXへの興味がありました。MXでは編成局に企画マーケティング部を作っていただき、これまでの人脈なども活かし、斬新な番組企画をしたり、番組の効果的な編成を考えるポジションをいただきました。
当時は医療番組、そして医療業界自体に興味がありましたね。難しいものではなくて、一般の方にも、自分自身にとっても優しくわかりやすいというコンセプトの番組ができないかと、現在のように医療番組が増える前からずっと考えていました。数十の企画提案書を作成し、立ち上げのために動きまわる連続でしたが、これまでの多くの仕事仲間や医療関係者なども様々な切り口の企画案を提案してくれました。加えて自らスポンサー開拓に動き、事業局との連携なども模索してきました」
だから、その後エンタメ業界から医療業界へと転身すること自体は、水上氏にとって十分に想像できるものだったという。
「私の友人である医師たちは、それぞれが病院を経営する他に、医療に関連する新しい事業、例えば新薬開発から介護施設まで、ワンストップで行う会社を立ち上げようとしていました。そんな医師たちから、『経営に参画してほしい』という話があり、タイミングもあって医療業界に入る一つのきっかけになったんです。
そしてほぼ同時期に大学病院で働く医師である妻の開業話もあり、医師本人や関係者からも経営の依頼がありました。医師だけでは、診療とケアマネジメントの両輪を組み合わせてそれぞれを強化させることは難しい。でもそうしないと患者様には最良の診療は提供できない。新規開業にはかくもやることが多いと当初から感じていました。だから、経営全般は私が担い、最良の診療を提供する病院を創る道を選びました」
事業には、ビジョンだけでなく「回せる」人間が必要
エンタメ業界で培った事業運営やコンテンツマーケティングの手法は、病院経営にも十二分に生かされている。
「病院開設までの準備期間には1年ぐらいかかりました。医療コンサルタントは入れず、マーケティングや経営戦略の立案と実行もすべて私がやりました。私自身で業者様との交渉を行い、医療機器や内装、卸や財務面のパートナーなどすべての選定も一人ひとりと会って決めていきました。
マーケティング、経営全般、事業運営のベースはエンタメも医療も一緒だなと実感した次第です。病院にしても、医療と経営が両輪になっていないと、最良の診療はできないのです。
例えば、診療補助、受付、医師、経営責任者がスムーズに連携できていないと、実際に診療が混みあった時など、連携不足が露呈してしまいます。ですので、みんなが情報と体験を共有し、仕事の質と量を大事にしつつ、ビジョンと理念をポジティブに持つ。そういう方じゃないと医療の世界では難しい。
そして、温かさがないと本質的なホスピタリティが成り立たないのは実感していましたので、高度な診療のご提供は言うまでもなく、ホスピタリティもうちのアドバンテージ、一つの柱として持っていますね」