解決策は「プリンアラモードの法則」です。この方法では、新たに量産化可能な、特定の属性の人に限定しない、全ての人が使いたくなるアイデアにあふれたプロダクト、製品、サービスを生み出すことができるようになります。
例をあげると、ニューヨークではベジタリアンに対応できないレストランは、団体客の予約が少なくなってきているそうです。現代のレストランは、食事の質を向上させるだけではゲストたちの心を掴むことはできません。
国籍、年齢、性別、宗教が異なる様々なゲストが集まっても、誰もが居心地よく過ごせる場所が求められるのです。多様な人々が集まることで、より一層魅力が増す商品やサービスこそが理想でしょう。
プリンアラモードの法則は商品開発にも応用できます。Ontennaはヘアピンのように髪の毛に装着し、振動と光によって音の特徴をユーザーに伝える全く新しいデバイスです。難聴者が不便に思っていることを解決しようとする「個別対応思考」からは、字幕などの文字による情報補完という発想が生まれるでしょう。
そうではなく、メインを難聴者の課題解決に置きながらも、音の楽しみ方そのものを「振動と光」に転換してアップデートし、みんなで共有できる新しいエンターテインメントへと昇華しています。障害の有無などによる五感の違いや、言語の違いのある人同士の間でエンターテインメントを共有するのは大変なことで、いかにして共有できるものを作るかということはこれからの課題です。
また、視覚障害者のためにという「個別対応思考」から作られた従来の点字時計は、触っても針がずれないように、頑丈で、重くて厚く、それでも針がはずれることがあり、価格も高価なものでした。EONEの時計は、ずれても戻る小さな磁石を採用したモデル。
使えるものが限られる視覚障害者の高度な条件下での課題解決をメインに置きながらも、スタイリッシュで斬新なデザインに磨き上げ、価格も3万〜4万円と、文字盤を見ずに時間を知りたいビジネスマンにも受け入れられました。
プリンアラモードの法則を使えば、あらゆる多様な人にとって、ニッチな物でも中途半端な物でもない、真に価値があって受け入れられやすい、新しい時代にふさわしいアイデアの詰まった商品やサービスを、誰でも生み出せるようになるでしょう。これから生き残るのは、プリンアラモードの法則を満たすもの。企業が多様化へ目を向ける視点は、今後ますます重要性を増していくと思います。
阿佐見綾香◎電通Bチームダイバーシティ担当。戦略プランナーとしてマーケティングや商品開発を担当。持論は「LOVEのカタチが変わると消費が変わる」。専門はLOVEマーケティング。