ビジネス

2019.02.08

体験をデザインする二人のCEOに聞く、ワービー・パーカー成功秘話

デイブ・ギルボア(写真左)、ニール・ブルメンソール(写真右)

学生4人が立ち上げた会社はいかにして「世界で最も革新的な企業」と呼ばれるに至ったか──。北米以外のメディアに初めて応じた取材で、共同創業者たちがその秘密を明かした。


派手な青色だったり、さりげない白塗りだったり。全米に85店舗以上ある、メガネ店「WARBY PARKER(ワービー・パーカー)」は見た目こそ色々だが、いずれも昔からあるみたいに街の景観に溶け込んでいる。それはまるで顔にかけたメガネが自己主張をしすぎることなく、それでいて個性が感じられるように。

ところが店に足を踏み入れた買い物客は驚くだろう。メガネ店のはずなのに、店内の棚にはメガネと一緒に数々の本が並べられている。『たのしいムーミン一家』のトーベ・ヤンソンからビートニクを代表するジャック・ケルアックら過去の有名作家まで、その顔ぶれはさまざまだ。

そして、なぜか場違いなように置かれた『メガネをなくす50の方法』という一冊の絵本。ヤギやサメに食べられたり、泥棒や宇宙人に盗られたり……。メガネをなくす、という絶望的な状況がユーモラスに描かれているが、じつはこのアイウェアメーカー「ワービー・パーカー」も、共同創業者がメガネをなくしたことがきっかけで生まれている。

2008年初秋のことだ。ペンシルベニア大学ウォートンスクールへの入学を控えたデイブ・ギルボア(38)は世界周遊で訪れた東南アジアからの帰途、機内にメガネを置き忘れてしまった。作り直そうにも思っていた以上に値段が高く、やむなくメガネなしで学生生活初日を迎えることに。

いくらブランド品とはいえ、iPhoneよりもはるかに高いのは酷すぎる。ギルボアがクラスメートたちに憤りを伝えたところ、その一人、ニール・ブルメンソール(38)から意外な事実を聞く。──原材料はそんなに高くないはずだ、と。

ブルメンソールは、視力の測定・矯正を通じて途上国の女性の自立や子供の教育を支援するNPO「ビジョンスプリング」で働いた経験を持ち、メガネの材料と製造コストについて熟知していた。

もしや、ここにビジネス・チャンスがあるのではないか。しかも、世界にポジティブなインパクトを与えられるかもしれない──。

そう考えたギルボアとブルメンソールは、クラスメートのジェフリー・レイダー、アンドリュー・ハントと組んで10年2月、ネットでメガネを買えるeコマースサイト「ワービー・パーカー」を立ち上げた。

アイデアの組み合わせが起こした“革命”

「ある程度は自分本位な動機もありましたよ。毎朝、目覚まし時計と格闘せずに、楽しく通勤したくなるような会社を作れないか、って」

2018年12月上旬、ニューヨーク市内にあるワービー・パーカー本社の図書室で、ブルメンソールは冗談めかしてそう振り返った。すると、ギルボアが隣で言葉をつなぐ。

「でも何十年も製品と流通の両面でイノベーションが起きていない業界を革新できれば、世界中の人々の人生を変えられることに気づいたのです」
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文=井関庸介 写真提供=ワービー・パーカー

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変えるデザイナー39」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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