スポティファイは2月6日、ポッドキャスト配信の「ギムレット・メディア(Gimlet Media)」の買収を発表した。ギムレットはインターネットカルチャー関連の番組「Replay All」やスタートアップにフォーカスした「StartUp」などの製作元として知られている。
同社はまた、個人や企業のポッドキャスト配信を支援するプラットフォーム「Anchor」の買収も発表した。金額の詳細は明かされてないが、同社はギムレットに対し2億3000万ドルを支払ったとされている。
スポティファイは年内に最大5億ドル(約550億円)の費用を投じて、さらに関連企業を買収する計画だ。同社は配信コンテンツの多様化により、利用時間を伸ばし、解約率を引き下げ、売上の増加を狙っている。
同社CEOのダニエル・エクは公式ブログで、音楽配信サービスとして2008年に始動したスポティファイが現在、個人が主体となって語るナラティブなコンテンツへの注力を進めており、ポッドキャストに大きな可能性を見出していると述べた。
「オーディオコンテンツは娯楽や教育、人々を起業や社会活動に向かわせるための動機づけなど、様々な領域で活用されている」とエクは述べている。「オーディオというフォーマットは進化を遂げている。ポッドキャストのビジネス規模はまだ比較的小さいが、スポティファイはそこに巨大な成長ポテンシャルを見出している」
エクによると、スポティファイでポッドキャストを聞く利用者は、音楽コンテンツのみを楽しむユーザーよりもサービスの利用時間が長い傾向があるという。
「ラジオ業界のデータから考えて、将来的に全ユーザーの20%以上が音楽以外のコンテンツを楽しむようになる。オリジナル番組を投入すれば、さらに成長を加速させることが可能で、プラットフォームの差別化にもつながる。このような施策を通じ、スポティファイを世界最高のオーディオプラットフォームに育てていく」とエクは述べた。
ポッドキャスト広告は700億円規模へ成長
ポッドキャストへの投資は競合との戦いを有利に進める上でも重要だ。「コンテンツの多様化で、9600万人のスポティファイのプレミアム会員らが、競合のプラットフォームに流出することを防げる」と、マーケティング企業MusicWatchのアナリストのRuss Crupnickは述べた。
「気になるポッドキャストを他社のプラットフォームで見つけた結果、スポティファイから離脱してしまう顧客が相次ぐようなことになれば、スポティファイにとっては最悪の事態だ」とCrupnickは続けた。
ポッドキャストは広告ビジネスにおいても急速な拡大を遂げている。ネット広告の業界団体Interactive Advertising Bureau(IAB)は、米国におけるポッドキャスト広告の売上が、2020年までに6億5900万ドル(約720億円)に達すると予測している。
リサーチ企業MIDiAのMark Mulliganによると、ポッドキャストの配信費用は定額制であり、音楽コンテンツのように視聴回数に応じた報酬は発生しないという。スポティファイは女優のエイミー・シューマーのポッドキャスト番組に100万ドルを支払ったとされるが、収益性の面から考えても、ポッドキャストへの注力は理にかなったものかもしれない。