ビジネス

2019.02.06

エシカルビジネスの担い手が原宿で狙うこと。人気のバスボムに特化したLUSHの新コンセプトストア

LUSHチーフ・デジタル・オフィサー/バスボム開発者 ジャック・コンスタンティン氏

フレッシュでオーガニックな原材料にこだわった商品、入浴剤といったバスアイテムやスキンケア、そして何と言っても店の入口に漂うアロマなどで、日本でもおなじみの「LUSH」。このイギリスの化粧品・バス用品メーカーが東京・原宿で新店舗を開いた。

「バスボム」の1アイテムに特化したのはなぜか。その理由を同社チーフ・デジタル・オフィサーのジャック・コンスタンティンに訊いた。

アートギャラリーのような空間に込められたコンセプト


世界中で人気の入浴剤「バスボム」に特化した商品展開を行う「LUSH 原宿店」

純白の壁には色鮮やかな球がずらりと整列し、異国情緒漂う香りが鼻を楽しませてくれる。東京・原宿に現れたモダンアートギャラリーのような空間は、斬新な商品開発と社会問題への取り組みが注目される英国の化粧品ブランド「LUSH」の新コンセプトショップだ。

ここで販売されるアイテムは、世界的に人気を博す同社の定番商品「バスボム」。お湯に入れるとシュワシュワと発泡し、湯内に身体に様々なポジティブな影響を与えるエッセンシャルオイルや自然由来の原料が溶け、バスルーム中に心地よい香りを振りまく。その様はまるでアートを見ているようで、「フォトジェニックだ」と世界中の人々によるSNSでの拡散も相まって世界的なヒット商品となった。

敏感肌に悩む自身の母が開発したバスボムを進化させ、世界中でヒットを飛ばす人気商品にまで成長させたジャック・コンスタンティン氏は、この新店を「世界初の取り組み」に位置付けている。





忍者がモチーフの可愛らしいバスボム「ジンジャ ニンジャ」。生姜が香り、ぽかぽかと温まる人気の商品

「ひとつの商品カテゴリーの販売に特化した出店ははじめてです。商品開発のみならず店内での体験全てを対象に、お客様を開発プロセスにご招待し、様々なフィードバックを基に進化していくプロジェクト#LushLabsをコンセプトにしています」

先にアートな空間と述べたが、この店内空間がまるでギャラリーのように感じられるのは、商品の色彩によってのみではない。バスボムは包装のない無垢の姿で彫刻的ともいえ、かつ価格や商品名を記したタグなど余計なものが一切取り付けられていないためだ。

「我が社が推進する取り組みの中に、ネイキッドアイテムの認知を広げることがあります。プラスチック包装を省き、商品そのままの姿、つまり裸(ネイキッド)の状態で販売することでプラスチックゴミを減らす取り組みです。原材料の生産、商品の製造、そしてお客様の手に届くまでに極力プラスチックゴミが出ないようにビジネスを推進し、自然環境に負荷がかからないようにするLUSHの使命の一つでもある」

ミラノとベルリンに開かれたコンセプトストアは、店内に並ぶすべてのコスメ商品群を包装せず販売する「ネイキッド」というスタイルですでに話題を呼んでいるが、今回の原宿店は1商品に限定し、商品包装やタグなどを省略し、デジタルで商品情報を全て表示させる、いわば“デジタル包装”は革新的な取り組みであると言えるだろう。

“当たり前”を打破する挑戦的なビジネスモデルが具現化した店


「LUSH 原宿店」の外観。2階層の店内には「インスタ映え」するフォトスポットが随所に


1商品と言えど、効能や香りによってその種類は多岐にわたる。90余りにも及ぶ商品を商品説明表示なしで、いかに販売するのか。

「気になる商品があったら、専用のアプリ“Lush Lens”を起動し、スマートフォンをかざす。すると原材料や価格、使用方法などを画面上でご覧いただけます。このサービスはリテール業界では新たなショッピングの仕方として画期的ですが、私たちにとっては非常に挑戦的でもあります。アプリをインストストールするということは、お客様にとって余計な手間にもなります。しかし、こうした障壁を承知のうえで、商品にはパッケージや商品説明表示があるという“当たり前”に挑む必要があると我々は考えています」

こうした挑戦的なストアをオープンさせる地に、原宿を選んだのはなぜだろうか?

「バスボムの認知は、日本においてはまだ満足のいくものではありません。“お風呂場がアートの世界になる”という未だ見ぬ入浴体験を、独自の風呂文化を持つ日本の人々にもっと知ってほしいのです。世界的にもテクノロジーの進んだ東京、そのなかでも先端技術や様々な新しいものを楽しんでくれる人が、原宿には集まると考えています」

人々の健康や地球環境に配慮した商品づくりは、もはや“当たり前”になりつつある。しかし、経営指針までもが真の意味で倫理的である企業はどれだけあるだろうか。持続可能性はもとより再生可能性を重視するエシカルビジネスを真に尊ぶLUSHの新たな取り組みを体感しに、原宿へ足を運びたい。

LUSH
https://jn.lush.com

edit by Shigekazu Ohno (lefthands) text by Ryo Inao (lefthands)

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