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2019.02.01 20:00

入場料が必要な書店「文喫」にいると、自分では気づかない「検索グセ」から解放される

「文喫」の店内

「文喫」の店内

入店するのに入場料が必要となる書店「文喫」が六本木にオープンして約2カ月。店に入ること自体に付加価値を提供する独特の形態が受けている。
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出版大手取次の日本出版販売株式会社が、本を選ぶための時間と場所を提供する書店、というコンセプトを提唱。店内では人文科学や自然科学からデザイン・アートに至るまで約3万冊の書籍を販売し、一人で本と向き合うための閲覧室や、複数人で利用可能な研究室、小腹を満たすことができる喫茶室を併設している。

「文化的な匂いのする場所で、時間を費やすこと自体が価値になってきています。だからこそ、本と本屋に価値を再提案していく場所をつくりたいと考えました。今回、文喫では『本を選ぶ豊かな時間』を提供していきます。本と出会って、本と向き合って、本を購入してもらう。この一連の体験を提供していくために入場料を設定しています。最高の体験を提供していき、本の販売、そしてそこに価値をつける入場料の二本柱で、ビジネスモデルを考えています」と話す文喫プロジェクトリーダーの武田氏。

入場料1500円(税込1620円)の内訳は、環境や設備といった空間と、音楽、喫茶、選書といったサービスなど。オープン前、ターゲット層は、六本木に勤めている人、若い女性などを想定していたが、実際は想定以上に幅広い世代、エリアの人たちが集う状況になっている。
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実際に利用した人に感想を聞くと、「いる間に1500円分の本を読めばモトはとれる。それよりも、普段目にしないジャンルの本や、普通の書店や図書館にはないマニアックな本、洋書の専門書などを手に取ることができるのがすごい」。本の並べ方も作家別や出版社別ではなく、ひとつのテーマにそって関連書籍を並べる形になっているので、興味のある事柄から複数の本を探しやすくなっている。



「文喫」があるのは、元々は「青山ブックセンター 六本木店」があった場所。写真集や洋書、デザインの本などを幅広く揃えた、時代の先端を感じることができた書店の跡地に、本との向き合い方を新たに提案する”場所”ができたことは興味深い。

ネットで世界中の本が買えるとはいえ、自分の「検索グセ」によって、巡りあえる本は自分が思う以上に偏りがある。全く興味のなかったジャンルの本との運命の出会いは、陳列されている本を”偶然”見かけて、”たまたま”手にとって、という予測不可能な動きから生まれてくる。

自分では気づかないうちに偏りがちに誘導されていた本選びが、幅広い品揃えとコンシェルジュのアドバイスによって、新たなきっかけを生み出す「文喫」。ネットの「あなたにおすすめ」「関連書籍」という、見えない縛りから脱出して視野を広げるのは、アナログな紙本との偶然の出会いなのかもしれない。

文=石澤理香子

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