欧米市場においては、グーグルやフェイスブックといった代表的なインターネット企業にも、新技術を積極的に採用しているエンタープライズ企業にも共通しますが、「企業が持つ共通のゴール」が根底にあって、それを達成する方法としてこういった技術を採用している、というストーリーを多く見かけます。
米国企業において、新技術を採用した成功事例の紹介記事、そしてなぜ採用する判断に至ったのかを説明しましょう。
ITに対する姿勢の違い(Old World IT 対 New World IT)
先進的欧米企業とレガシーな日本企業では、ITに対する姿勢が根本的に違います。もちろん、欧米にも旧態依然としたレガシーな企業は多いですし、日本にも先進的な企業はありますので、公平を期する意味でも国に関係ない形で、「Old World IT:旧世代IT企業」と「New World IT:次世代IT企業」と分類し、比較しましょう。
それぞれ、ITに対する取り組みは、以下のように根本的なスタンスの違いがあると感じます。
・Old World IT:旧世代IT企業 ⇒ 既存事業があって、それを実現するのにIT技術を利用する
・New World IT:次世代IT企業 ⇒ IT技術を使って新しい事業を生み出す
旧世代IT企業は、既存の事業をベースにそれを改善する、という目的で新技術を導入するケースが多いのです。既存サービスのパブリッククラウドへの移行(いわゆる、リフト&シフト)、開発プロセスの自動化を目的として、ツールの導入などいくつか典型的なパターンがありますが、ある一定の成果は出しつつも、プロジェクトが終わるとその先の展開がない、というケースが非常に多く、持続性、成長性の少ないプロジェクトになりがちです。
一方、次世代IT企業は、新しい収益を生む事業を作り出すために新技術を採用するケースが目立ちます。それは全く新しいアプリを開発する場合もありますが、既存のアプリやサービスを統合する、というケースも多く、応用範囲が広いだけではなく、常に成長し続けることができる事例に発展する傾向が高いのです。例えば、次のような事例があります。
・既存の顧客管理システムに、名刺管理システムやフェイスブック、ツイッターのフィード収集機能を統合し、カスタマー360度システムをクラウド上で開発、展開する。これにより、リアルタイムで顧客に対する広範囲な動向分析が可能になり、きめ細かい顧客サービスが展開できるようになります。
・古い開発手段で開発した、大規模なモノリス型Javaアプリから、顧客向けのアプリ部分を分離、コンテナ化した上でマイクロサービス化した分散型システムを構築、従来年一回の製品エンハンスが、1日で数回頻度でリリース。これにより、多様な顧客ニーズに決め細く、迅速に対応でき、なおかつ品質の高いカスタマー向けアプリを提供できるようになります。