作家になったきっかけは、パリ在住のアーティスト、コバヤシエツコとの強烈な出会い。国連で働きつつ趣味で書くつもりが彼女の話を「誰かに伝えたい」と強く思うように。退職後、パリで働く日本人10人を描いた『パリでメシを食う』で作家デビューした。
その後も「普通」の人々の話から心を揺さぶる本を書いてきた。彼らは共通して「自分がやりたいことに忠実でシンプル。余計なものが削ぎ落とされている」(川内)。そのストレートな生き方に影響を受ける読者も多い。本を読んでパリに旅立ったアーティストもいた。
自身は恵まれた職業を捨てる怖さはなかったのだろうか。「それはありません。失うことを怖がって、素晴らしい人生を失うことの方が怖いですよね?」
かわうち・ありお◎1972年、東京都生まれ。日本大学芸術学部を卒業し、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。開発コンサルタントを経て国連職員に。2作目の『バウルを探して』で第33回新田次郎文学賞受賞。