国連職員から作家へ、人生を変える物語

ノンフィクション作家 川内有緒

最新作の『空をゆく巨人』が第16回開高健ノンフィクション賞を受賞した。現代美術の巨匠、蔡國強と福島県いわき市の会社経営者、志賀忠重がつくった「人がたくさん来ると困る」という不思議な美術館をめぐる物語。著者の川内有緒は元国連職員という異色の経歴を持つ。
 
作家になったきっかけは、パリ在住のアーティスト、コバヤシエツコとの強烈な出会い。国連で働きつつ趣味で書くつもりが彼女の話を「誰かに伝えたい」と強く思うように。退職後、パリで働く日本人10人を描いた『パリでメシを食う』で作家デビューした。

その後も「普通」の人々の話から心を揺さぶる本を書いてきた。彼らは共通して「自分がやりたいことに忠実でシンプル。余計なものが削ぎ落とされている」(川内)。そのストレートな生き方に影響を受ける読者も多い。本を読んでパリに旅立ったアーティストもいた。

自身は恵まれた職業を捨てる怖さはなかったのだろうか。「それはありません。失うことを怖がって、素晴らしい人生を失うことの方が怖いですよね?」

かわうち・ありお◎1972年、東京都生まれ。日本大学芸術学部を卒業し、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。開発コンサルタントを経て国連職員に。2作目の『バウルを探して』で第33回新田次郎文学賞受賞。

text by Michiko Nariai photograph by Munehiro Hoashi(Avgvst)

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