経済合理性的にはフェイクニュースは増え続けるしかなく、倫理や道徳、はたまたジャーナリズムの精神だけではその増加を抑えることができなくなってしまった。
さらにややこしいのは「釣り記事」である。ネット上には、一部真実であるものの、誇大な表現で“盛られて”いたり、読者がタイトルから想定した内容とはどこかズレているという類の記事が大量に溢れている。
読み手としては、そもそも得られる情報量に限りがあるうえ、流通する情報がどこまでが真実かまで判断しなければならないという状況だ。そのため、人工知能(AI)など、判断を自動化してくれる技術の実現が強く求められる分野でもある。
そんな折、韓国の名門大学KAISTとソウル大学の研究チームが共同で、釣り記事を見破る人工知能を開発。一部、仕組みを公開した。開発されたモデルには、ディープラーニング手法のひとつである「再帰型ニューラルネットワーク」(RNN)が利用されている。
システムは記事の内部に一貫性があるかを把握し、段落の構造や単語の羅列による意味を分析。タイトルとの整合性などを察知する。モデルの精度は90%を超えているとされ、ポータルサイトや検索サイト、学術資料などへの応用が見通されている。
なお、KAISTの別研究チームも類似した研究を行っており、システムの使い方が非常に簡単にブラッシュアアップされている点が興味深い。ネット上にある記事のタイトルにマウスをかざすと、「釣り記事確率○%」という形で0から100までの数字が表示される仕組みで、読者は記事を読む前に記事の特性を判断できるというものだ。
おそらく、同様の釣り記事判別AIツールが普及していけば、ニュースの質、またニュースを書く記者の質も必然的に変化を迫られるだろう。読者は、情報を得るための時間を浪費を圧縮できるようになるかもしれない。
一方で、ネット時代には嘘か真実かはあまり重要ではなく、「信じたいニュースを信じる」という人間側の心理も露呈し始めている。情報の大量な流通が「真実=ものごとの基準」の在り方そのものを崩壊させていくなかで、AIなど新たなテクノロジーが解決案や補完策を提供できるのか注目していきたい。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>