他人の金で賭けをする投資家らは、英国から欧州に移ることを示唆している。その一方で、英国を目指す移民らは自らの命をいちかばちかに賭けることもいとわない。
賭けの度合いを考えると、英経済の魅力を示す指標として信頼できるのはおそらく後者だろうと私は思う。
銀行幹部は逃げる準備
ロンドンの銀行幹部らは、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)により、パリやフランクフルトに移る覚悟を決めている。事業を続けるためにはブレグジット後、ロンドンを去らなければならないことを嘆いているのだ。
投資家らも、ブレグジットが決まった2016年6月の国民投票以来、英国を敬遠してきた。ブルームバーグのデータによると、ブレグジット投票前は1.44米ドルほどだった英ポンドは、最近では1.28米ドルほどまで下がっている。英ポンドの弱さは、英国が欧州連合(EU)とどのような合意を結ぶかが不明瞭な事実を反映したものだ。投資家は不安定な状態を嫌うため、雲が晴れるまでの間は他の場所に金を置いておく。つまり、より多くの情報が明らかになるまで様子をうかがっている状態なのだ。
命を懸ける移民たち
一方で、移民は英国に押し寄せ続けている。そのために法を犯し、命を危険にさらす必要があったとしてもだ。英国のサジド・ジャビド内相は昨年12月末、英仏海峡を横断して英国への不法入国を試みる移民の深刻な問題に対応するため、休暇を早めに切り上げた。
小型ゴムボートで英仏海峡を夜間に横断する人の数は増えている。何も知らなければ簡単なことにも思えるこの航海は実は危険で、溺死や凍死の危険性がある。英仏海峡は最も短い地点では22マイル(約35キロメートル)しかないが、同時に世界で最も交通量の多い海峡でもある。この旅はただでさえ非常に危険なものだが、夜間に横断することで死に至る危険性が上がる。ジャビド内相が仏政府と協力し、違法な海峡横断を減らそうとしているのは、まさに命を救うためなのだ。
英仏海峡の違法な横断は、3月29日に控えたブレグジットの期限が刻一刻と迫る中で増加している。移民たちは、ブレグジット後に英国に入国すれば、その前になんとか到着した場合より生活が厳しくなると考えているのだ。