数ある産業の中でも、昨今、注目を集めているのが保険業界にテクノロジーを掛け合わせた「InsurTech(以下、インシュアテック)」の領域だろう。2017年5月に発表した調査結果によれば、2018年度には565億円だった日本のインシュアテック市場は2019年度には800億円、2020年度には1100億円に成長するという。
そんなインシュアテック市場で事業を展開する、hokanが2019年1月15日、総額1.4億円の資金調達を実施したことを発表した。既存株主の500 Startups Japan、BEENEXT、MIDベンチャーキャピタルに加え、Archetype Ventures、Sony Innovation Fund、セゾン・ベンチャーズが引受先となっている。
2018年3月にも500 Startups Japan、BEENEXT、MIDベンチャーキャピタルから総額6000万円を調達しており、累計で2億円の調達となる。
hokanは調達した資金をもとに、保険業法改正に伴う保険代理店の体制整備と、AIによる保険営業の支援を強化していく予定だという。
AIを活用して保険営業の生産性向上をサポート
hokanは2017年8月創業。同社の代表取締役の小坂直之はプルデンシャル生命の出身で、過去に保険代理店のファイナンシャル・ジャパンを立ち上げるなど、長らく保険業界に携わってきた人物。保険業界で働く中で感じた「非効率な現場を変えたい」という思いから立ち上げたのがhokanだ。
創業から10カ月が経った2018年6月23日に、保険営業のためのクラウド型顧客・契約管理サービス「hokan」をリリースした。同サービスは忙しい保険営業が迷うことなく簡単に操作できることを目指しており、以下の4つが主な特徴だという。
1. 一覧画面で情報を横断検索、瞬時に確認
2. 顧客に関わるすべての情報を1ヶ所に集約
3. 事務作業を自動化し、負担を圧倒的に軽減
4. 場所にとらわれず、すぐに情報を記録・確認できる
顧客管理、契約管理、スケジュール管理、タスク管理など複数の機能を搭載している
hokanは同サービスを通じて、保険営業の働き方を変え、生産性向上に寄与していく。例えば、hokanによれば「現在、多くの代理店が意向把握を紙で行っています。そのため、商談の度に紙が発生し、その保管期限は5年〜10年と長期に渡るため、大量の紙を保管するための倉庫を借りなければならず、事務管理にも膨大なコストがかかっている」という。
そうしたアナログで非効率な部分を、hokanがペーパーレス化した。シンプルな画面と操作で、顧客の意向を簡単に把握できるようにしていくそうだ。
また、hokanはAIを活用して、保険営業の生産性向上も支援していく。同社は「保険販売の現場において、当面は保険営業がAIに置き換わることはない」と考えており、保険営業をAIに置き換えるのではなく、保険営業をAIが支援する世界を目指している。
例えば、保険証券の自動読み込み機能によって他社で契約した保険商品の詳細も、カメラなどで保険証券を撮影するだけでデータ化し、「見える化」できるようになる予定だ。
将来的にはレコメンド機能によって、決算が近い企業や更改が近い契約を保有している顧客の情報を自動的に受けられ、その顧客にいま最適な保険商品を自動的に知ることができるようになる「保険営業支援AI」を目指すとともに、改正保険業法で求められている顧客の対応履歴や保険営業の社員化および勤務状況の管理などにも対応していくという。