例えるなら、一種の世界最高のスープだ。タイの「トムヤンクン」を思い浮かべてみてほしい。甘さ・酸っぱさ・苦さ・塩っぱさの4つの味を、ひとつのスープの中でそれぞれはっきりと楽しむことができる。レヴァンテ・トロフェオも、上品なルックス、パワー溢れるV8エンジン、しっかりしたフットワークが混ざり合い、いい味を出している。
料理の例えではいまいちイメージがわかなけらば、俳優ではどうだろう? この車は「ワイルド・スピード」シリーズや「スコーピオン・キング」でおなじみの肉体俳優、しかも、2016年フォーブス誌で「最も稼いだ男優」というドウェイン・ジョンソンのスピードとパワー、カッコいいルックスに例えられるだろう。
まず、ボディラインと曲面が美しい外観をノーズからテールまでゆっくりと目で舐めよう。大きなグリル、鋭いヘッドライト、ビヨンセを思わせる巨大なヒップを見るだけで、何かいい予感がする。
ドアを開けて運転席に座ると、赤いヘブンに囲まれる。シート、センターコンソール、ダッシュボードが全て真っ赤のソフトな本革になっているけど、ステアリングホイール、ギアセレクター周り、GPSディスプレー周りは品良く黒に色づいている。どこを見ても、触っても、とてもリッチな雰囲気ながら、運転好きには、その長くてパパっとシフトが決まるパドルがたまらない。
でも、この1台を購入する最大の理由は、なんといっても一流パワートレーンだ。マラネッロにあるフェラーリ工場で生産されるツインターボ付きV8エンジンはなんと590psを発揮する。
フェラーリ488GTBとポルトフィーノと同様のエンジン・ブロックを採用しながら、最終的なチューニングと音作りはマセラティの開発部が担当したそのエキゾーストノートは、グレートデーン犬とライオンの吠えを足して二で割ったような音になっていて、ヤミツキになる。
8速のA/Tと組み合わせられているV8は、ゼロから100km/hまでの加速性は3.7秒、最高速はなんと304km/h。最大のライバルのポルシェ・カイエン・ターボSは、トロフェオより若干速いかもしれないけど、後者のエンジンはフェラーリ製だからスリル度と笑顔度では軍配があかる。