自動運転機能を搭載し、とうとう「レベル3」に挑戦したーアウディ A8

自動運転の技術開発が進む中、法整備が追いつかないために実現を阻む。密かに高度な技術を搭載したクルマは、どのようにその姿を変えてゆくのだろう。

AUDI:レベル3の自動運転を睨んだフラッグシップモデル


映画『ナイトライダー』の一幕のような“完全自動運転”への道のりは険しい。現実には、自動運転にはレベル1−5の定義があり、スバル「アイサイト」等の高度ドライバー支援はレベル1、テスラ、メルセデス・ベンツ、BMWが投入した“セミ自動運転”はレベル2に分類される。 

そんななか、アウディが旗艦モデルの「A8」で、自動運転機能の「AIトラフィックジャムパイロット」を搭載して、レベル3に挑戦したことは評価すべきだ。

国連欧州委員会による自動車基準調和世界フォーラム「WP29」で自動操舵に対する制限があるなど、法整備が追いついていないため、 現段階で実車に搭載はできていない。しかし、それでもアウディは、レベル3に必要な新型センサーや制御技術の開発にあえて挑戦をした。

技術的には、操舵を伴う自動運転=レベル3を実現可能だと世に広く伝え、自動運転の実現に必要な法整備等を国際的な場で議論することを促すことにつながる。事実、「A8」にはレベル3のための技術が搭載されており、高度ドライバー支援を統合した「アダプティブドライブアシスタント」にも反映されている。 

自動運転を見据えて開発されたのは、技術だけではない。ラウンジを意識した室内空間は、「運転から解放されたとき、人はどうクルマの中でリラックスするのか?」を考えた結果だ。ボタンやスイッチを減らし、リラックスできる空間に仕立てている。 

日本では、ようやく内閣官房から「自動運転に係る制度整備大綱」が発表されて、2020年のオリンピック開催にあわせて“自動運転”の車両が走る予定だ。アメリカではGoogleやGMが、中国では百度や阿里巴巴が、それぞれ自動運転に向けた取り組みを進めている。アウディが投じた一石は、世界における自動運転に関わるエコシステムの変化を加速することにつながる。


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文=川端由美

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