なぜメルカリ社員はそこまで自発的に、積極的に活動できるのか。
聞き手は、自身もトランスジェンダーで、今年15万人を動員した日本最大のLGBTプライドパレードを運営するNPO法人・東京レインボープライドの共同代表理事を務める杉山文野。
「いま、なぜダイバーシティが必要なのか?」をテーマに、第一線で活躍する人々と実体験を語りあう。
「性善説」の会社では、社員が自ら手を挙げる
杉山:メルカリでは、LGBTやダイバーシティへの取り組みが、トップ層からではなく社員の自発的な取り組みから始まっているそうですね。
ダイバーシティに関心をもつ社員の話し合いが発展して、いまでは30カ国以上の社員がいたり、LGBTのパートナーがいる社員に婚姻関係と同じ補償をするまでになっている。
小泉:前回お話ししたように、メルカリではメンバーが5人集まったらなんでも「部活」というくくりを与えて、会社から1万円の補助を出しています。活動は基本的に、勤務時間内に行ってもらいます。ダイバーシティへの取り組みも部活から始まったんです。
杉山:部活制度はとてもいい制度ですよね。とはいえ、それでも職場の中でダイバーシティについて考えようとする社員が自発的に現れるのは、かなり珍しいのではないでしょうか。普段話していても、メルカリ社員には主体的な方が多いように感じます。
小泉:基本的に、性善説を採っているからかもしれませんね。会社が性悪説的に則ってルールをつくると、社員は会社のお膳立てなしでは動かなくなってしまいます。
社員の自由な行動を信頼しておけば、彼らは放っておいても自発的に動き出してくれるんです。
杉山:だからといって、そこまで自発的に動くものでしょうか?
小泉:あとは身もふたもないかもしれませんが、採用段階で主体的な人を揃えているからでしょうね。メルカリは「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」というバリューを、とても大切にしています。
バリューを共有できる人を採用しているから自然とメンバーの軸も統一されるのでしょう。
どんなに優秀な人材でも、会社のバリューに合わない人は雇いません。例えば、どんなに優秀な方でも1人でやりたい方もいますよね。「All for One」を掲げるメルカリでは残念ですがそういう方はあまりフィットしないように思えます。
スペックだけでバリューに合わない人を採ってしまうと、そこから軸がぶれて会社の文化や社風が崩れてしまいますから。