これまで不可能と思われていた極小の部品がつくれる技術が発達すると、医療、宇宙、ITなどあらゆる分野で「製造」にどんな革新が起きるのか。
「うちがつくるモノは小さいけど、価値はビッグなんですよ!」
威勢よくそう言って胸を張るのは、入曽精密の代表取締役・斎藤清和だ。埼玉県入間市で金属切削加工を手がける同社は、F1マシンのエンジン、人工衛星、内視鏡等医療機器の金属部品などをつくってきた。なかでも得意とするのは、部品のサイズが1mm以下という、肉眼では見えないほど小さな部品を金属から削り出す超微細加工である。
そんな入曽精密が世界的な注目を集めたのは2002年。斎藤がコンピューター制御の5軸切削加工機(マシニングセンタ=MC)とCAD/CAMを連動させ、アルミの塊から高さ15cmの薔薇を一体型で削り出したことに端を発する。
「我々のような中小企業は高い技術力を持っていても、つくっているのはお客さんの製品だから、外部に見せることはできなかった。それなら世界の誰が見てもひと目で“すごい”とわかるオリジナルをつくろうと考えたんです」
斎藤が「MC造形システム」と名付けた技術を駆使して削り出した薔薇は、精巧な花びらやトゲ、葉脈までもが忠実に再現されていた。
「こんなことができるのかと驚かれて、逆に驚いた。それならもっと小さくつくろうと思った」
05年、斎藤は当時世界最小サイズとなる0.3mm角サイコロの製造に成功。同社の「MC造形システム」は高い評価を受け、トヨタ自動車、日産自動車、TDK、キヤノンなどと並んで「2005日経ものづくり大賞」を受賞した。
それだけではない。13年にドイツ・ハノーバーで開かれた「5軸加工プロセスコンテスト」本選に日本企業として唯一招待され、世界3位の表彰を受けた。16年には世界最小の0.1mm角サイコロを製造し、社員15名の中小企業が持つ高い技術力を再び証明した。