一方で政治・経済系のメディアは、同社と米政府とのトラブルを盛んに報じている。
ファーウェイのスマートフォンは、この1年で販売数量だけでなく、評価の面でも大きな躍進を遂げた。かつては中国製スマートフォンを見下していた欧米系メディアは、今やファーウェイ製品の革新性や性能の高さを、アップルやサムスンと同等に評価している。
筆者が住む香港の人々は、中国製品を敬遠する傾向があるが、最近ではファーウェイ製品をよく見かけるようになった。
ファーウェイのCEO、胡厚崑(Ken Hu)は先日、同社の東莞市の施設で記者会見を開いた。胡によると、クリスマスまでにスマートフォンの出荷台数が同社史上最高の2億台を突破し、売上高は1000億ドル(約11兆円)に達する見込みだという。
欧米系メディアは、今回の記者会見を直前になって知らされた。会見では、12月1日に逮捕された同社の孟晩舟(Meng Wanzhou )CFOのことや、米政府が同盟国に対してファーウェイ製品の使用中止を求めていることについては全く語られなかった。
会見に先立ち、サイバーセキュリティの研究室など、ファーウェイのテスト施設の見学ツアーが行われたが、これは非常に珍しいことだ。見学ツアーの後、胡は海外メディアからの質問を受けつけた。全体を通して、今回の記者会見の狙いがファーウェイに対する不安を払拭し、透明性や開示性をアピールすることであることは明らかだった。
胡は、孟に対する訴訟手続きが進行中であることを理由に彼女の逮捕について語ることを拒否したが、それ以外の質問に対しては積極的に答えた。胡はファーウェイが困難な問題に直面していることを認め、米国で事業を展開することが非常に困難であるため、現状のオペレーションはかなり限定的であると述べた。
証拠があるなら公表すべき
一方で、米政府からサイバーセキュリティ上の脅威であると批判されたことについて聞かれると、自信を持って否定してみせた。
「米国が証拠を握っているのであれば、公表するべきだ。あらゆる結論や推測は、証拠に基づいて導き出されるべきだ。ファーウェイが提供するソリューションや部品が安全でないことを示す証拠を持っているか、持っていないか、はっきりさせるべきだ。彼らは、いかなる理由でファーウェイがサイバーセキュリティ上の脅威であるというのか」と胡は語った。
胡は、米政府からの批判とは無関係だと断った上で、同社が事業を展開する国において、サイバーセキュリティ強化に今後5年間で最大20億ドルを投資する計画を明らかにした。
「セキュリティ上の不安を払拭するために、積極的に対応していきたい」と胡は述べ、世界中の政府との対話に応じる姿勢を強調した。
ファーウェイは、スマートフォン以外にも通信機器の製造を主力事業としている。胡によると、これまでに5G関連で25件の契約を獲得し、通信機器の分野で世界トップの地位を維持しているという。