経済・社会

2018.12.16 16:00

国のリーダーが若者世代を「軽視している証拠」 米大統領の例

ドナルド・トランプ大統領(Photo by Jabin Botsford/The Washington Post via Getty Images)

米ニュースサイトのデイリー・ビーストは先ごろ、ドナルド・トランプ大統領がどれほど自国の将来に無関心であるかを明らかにする記事を掲載した。

政府高官らがトランプに対し、増え続け、支えきれなくなる政府債務について警告したときも、大統領はこの問題への取り組みにほとんど関心を示さなかったという。問題が本格的な危機に発展するのは、トランプが退任したずっと後のことだからだ。

現政権の発足以来、その行動に注意を払ってきた人なら誰でも、彼らが財政責任を重視しないことは分かっているだろう。これまでにトランプが成し遂げた中で特徴的なものと言えるのは、連邦議会予算局(CBO)が向こう10年間で政府債務を2兆ドル(約227兆円)以上増やすことになると予測する党派的な減税措置だ。

トランプが示した2018年度の予算案を見れば、政権が目指す政策を全て実施すれば、政府債務はオバマ政権で最後に成立した予算措置が実施されていた場合に比べ、大幅に増加することが分かる。与党・共和党もまた、増大する政府債務が国民にもたらす負担をほとんど気に掛けていないことが明らかだ。

国民はリーダーの「遺産」を受け継ぐ

デイリー・ビーストのこの記事が、首都ワシントンでジョージ・H・W・ブッシュ元大統領の葬儀が執り行われた日に公開されたのは、やや皮肉なことだ。現在の共和党員たちとは異なり、米国の第41代大統領は、財政規律を維持することの重要性を理解していた。

ブッシュは1980年の大統領選に向けた共和党の予備選で、減税に頼るばかりの「ブードゥー経済学」だとしてロナルド・レーガンの一連の経済政策を批判した。それから約10年後、ブッシュは増税と歳出削減を同時に実施する画期的な予算合意に署名。過去50年間で4回しか実現していない均衡予算の成立の基礎を築いた(1993年にクリントン政権でも実現)。

また、ブッシュは財政政策によって米国の将来を支えただけではない。環境の危機が増大していることを示す酸性雨の問題が報告されたとき、ブッシュは世界を結束させ、問題を改善に向かわせるための断固たる行動を取った。

大気浄化法と水質浄化法の改正は、将来世代のために地球をより“健康にする”という環境保護に関する私たちの責任において、重要な意味を持つ遺産だ。一方のトランプは、その地球を傷ませる行動を取っている。

気候変動の問題は現在、1980年代に酸性雨が与えた以上の深刻な脅威を世界にもたらしている。だが、2015年に採択されたパリ協定に基づき、各国が団結してこの緊急の課題に取り組もうとするなか、トランプは同協定からの離脱を表明。米国を世界で唯一、この協定に参加しない国にした。トランプ政権はその他の環境規制についても、それぞれの効力を弱めている。

トランプが米国の若者たちに向けて発するメッセージの内容は明らかだ──環境問題と政府債務のどちらも、「君たちの問題」だということだ。デイリー・ビーストの記事は、あるトランプ政権の元高官の言葉を紹介している。

「(トランプは)政府債務の政治的な性質を理解している。だが、率直に言って、彼は明らかに、この問題が自らの遺産において重要なものだとは考えていない」

真実とはまるでかけ離れた考え方だ。米国民は、トランプが大きく膨れ上がらせた借金を遺産として受け継ぎ、返済していかなければならないのだ。

編集=木内涼子

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