ショットの技量が試されるコース

ポートマーノック・ゴルフ・クラブ

1894年に開場したポートマーノック・ゴルフ・クラブは、アイルランド・オープンやウォーカーカップなど由緒ある大会が開催されてきた地。ここで筆者は、世界と日本のゴルファーの力の差を思い知る。


アイルランドへゴルフをしに行くなら、ダブリン空港から入るか、西海岸のシャノン空港から入るのが一般的だが、やはりダブリンに到着したら、空港から車を走らせて15分ほどの距離にあるここ、ポートマーノック・ゴルフ・クラブですぐにプレイしないとゴルフ愛好家とは言えないだろう。
 
過去にアイルランド・オープンを19回も開催しているほか、たくさんのアマチュア大会のホストコースになっている。また1991年には、アイルランドとして初のウォーカーカップ(米国チームと英国・アイルランドチームのアマチュアゴルファーによる、由緒ある団体戦)を主催しているほどの名門である。

2017年度の米国ゴルフマガジン誌で発表された世界のゴルフコース トップ100のランキングでは、全英オープン開催コースの常連のロイヤル・リバプールやあのイギリスの南東部、北海に面したケント州のサンドウィッチにあるロイヤル・セントジョージズなどと一緒にランクインするなど、ゴルフ通のあいだでは非常に高く評価されているコースである。
 
また1984年の開場以来、ポートマーノックで世界中の偉大な選手たちがプレイしてきた。初期の著名な選手としては、ハリー・バードンやジョン・ボールの名前が挙げられるだろう。また戦時下においても、ボビー・ロックやヘンリー・コットンが競い、ポートマーノックで開催されたさまざま大会で勝利を収めた。

近代ゴルフにおいて最も著名なアーノルド・パーマーも1960年にポートマーノックで開催されたカナダカップ(国別対抗戦。現在の名称は「ワールドカップ」)でサム・スニードとともに勝利するなど、選手たちの活躍がまた、ポートマーノックの国際的な評価を押し上げるのだった。
 
筆者がプレイしたのは初夏のアイルランドにしてはかなりひどい雨の中であったが、手引きカート用の雨除けのレインカバーをプロショップで買い、ティーオフに向かった。雨のため筆者らが準備にちょっと時間をかけていると、地元の高校生が2人、3人と、おそらくアイアン数本とウッド2本、パターの入ったハーフセットを担いで、どんどん「お先に」と会釈しながらティーオフしていった。
 
高校生らのプレイの様子を見ていると、2番アイアンなどで弾道の低いボールを放ち、雨風の中をどんどん進んでいく姿に、「日本のアマチュアゴルファーもこのようにプレイできるようになるには、どれだけの月日がかかるだろうか」と思いを馳せた。

その昔、日本サッカーと世界のサッカーのレベルの差を痛切に感じていた筆者は、日本のゴルフと世界のゴルフのレベルの差が埋まるのもかなりの年月を必要とするなと直感し、忸怩たる思いをもった。その一方で、この由緒あるコースでプレイしてこそ得られる経験が地元のゴルファーの実力を底上げしているようにも思い、まさにポートマーノックがゴルファーを育てているのだと感じたのだった。
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文=小泉泰郎

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