起業にも投資にも通じている話題の著者が、リスクを取ることの本当の意味と、自分の人生観を変えた本について語った。
『ゼロ・トゥ・ワン』(NHK出版刊)が話題のピーター・ティールは、シリコンバレーきっての「ビジョナリー」だ。過去から学んだ者だけが未来を見通せる―。彼がどのような本を読んできたのか、訊いてみた。
―人生で初めてうまくいったリスクの高い投資は何でしたか?
ティール: 初めての投資は、ウェブ上のカレンダーを開発する会社へのものでした。10万ドル(約1,000万円)も投じて、すべてを失いました。しかし、その投資を通じてルーク・ノセックと出会いました。彼とは後に、簡易決済サイトの「ペイパル」を立ち上げています。だから、投資とは必ずしも「お金」のことばかりではありません。それと同じくらいに、「時間」も大きな意味を持ちます。確かに、投資は金銭面では失敗に終わりました。しかし、ルークとは、ペイパルで同僚、ひいては親友にまでなりました。そして、今日もベンチャー投資会社の「ファウンダーズ・ファンド」で一緒に働いています。それが、すべてを物語っているのではないでしょうか。
―今までに読んだ本で、最も影響を受けた本は何ですか?
ティール: ジェームズ・D・デビッドソンとウィリアム・リース=モッグ著『ソヴェリン・インディヴィデュアル』(未邦訳)ですね。ちょうどペイパルを創業する前、という特別なときに読みました。テクノロジーに関する思考は、しばしば両極端になりがちです。つまり、「テクノロジーとは、長期的視点に影響を及ぼす歴史的な要素なのか? それとも、短期的視点で捉えてもよい投機対象に過ぎないのか」というものです。その点、この本はそのいずれとも異なります。「先見の明を持て」と真剣に説くからです。ものごとを熟考すれば、それを理解し、10~20 年先の未来を見越した計画を立てることができる―。成功するためには、そのように考えることが重要なのです。