女性の産後復帰を阻む「職場での搾乳」問題

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母親が働きながら搾乳をする場合、この概算時間には搾乳器の準備や掃除の時間、母乳をためたり移したりする時間は含まれていない。また、母親が授乳のため1日何時間も過ごす設備も考慮されていない。ブルームバーグが引用した搾乳器販売企業エアロフロー・ブレストパンプス(Aeroflow Breastpumps)の調査によると、職場には自分たちのニーズを十分に満たす搾乳室があったと回答したのはわずか47%で、12%は部屋が用意されていたものの搾乳には不十分だったと回答した。米国では、職場の搾乳室に関する法的要件が存在せず、何が十分なのかについてはさまざまな議論が生じ得る。

現代の女性は、昔とは違う職場での1日を過ごしている。幸運にも出張の機会がある場合(子を持つ女性社員は出張や大きな仕事を与えてもらえないことが多い)、トイレの個室や空港ターミナルで搾乳するなど、考えをめぐらせる必要がある。私は3人目の子どもが赤ちゃんだった頃、会社起業に当たってベンチャー投資を集めるために常に出張していて、娘を連れて行くことも多かった。

母乳育児のための時間と場所を確保する問題以外にも、小さな子どもを持つ女性はビジネスリーダーになれないというスティグマが存在する。私はブルームバーグの記事に出てくる女性に強く共感した。彼女が語った母乳育児による「長期的な影響」は、私も感じている。会社の上層部は、私が「プレッシャーに持ちこたえられる」かを疑問視し、昇進や役員になる機会を与えてくれなかった。

先ほどのエアロフロー・ブレストパンプスの調査では、職場で搾乳する必要があるとの理由で、仕事やキャリアの変更を考えた女性が47%いることが分かった。しかし考えてみれば、男性の中で、家庭の事情に合わせて柔軟な働き方を要求することを恥じてキャリアの変更を考えたことがある人は、果たしているだろうか──?

育児休暇を増やすことが解決策だというのは簡単だ。世界でも裕福な国の一つである米国が、いまだに女性への育児休暇を保証していないのは理解に苦しむ。育児休暇の拡大が必要なのは確かだが、これは男女間の給与の不平等という大きな問題を最終的に解決してはくれないし、母乳で育てることを選んだ母親とそうでない母親の間の不平等もなくならない。

私たちは、親たち(特に母親)が仕事で活躍・成長しながら、子どもを育てやすい環境を作る必要がある。職場と企業文化を立て直することから始めれば、この変革は可能だ。こうした政策決定の最前線に女性が立つ強い社会を作れば、経済は全体的により強固になるはずだ。

編集=遠藤宗生

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