11月29日、Asanaは元米国副大統アル・ゴアが会長を務めるGeneration Investment Managementから、5000万ドル(約57億円)のシリーズE資金調達を実施したとアナウンスした。Asanaの企業価値は今回、15億ドル(約1700億円)とされた。
Asanaは今年1月にもGeneration Investmentの主導で7500万ドルを調達しており、当時の企業価値は6億ドルとされていた。モスコビッツが、フェイスブックの初期の社員であるジャスティン・ローゼンスタインと同社を設立したのは2008年のことで、累計の資金調達額は2億1300万ドルに達した。
同社COOのChris Farinacciによると、Asanaの業績は7四半期連続で拡大しているという。「当初の見込みよりも速い速度で成長を続けている。今後は海外市場での拡大に注力したい」とFarinacciは話した。
Asanaの有料会員は先日、5万社を超え、顧客企業にはウーバーや富士通、ボーダフォンなどがある。無料版を導入した企業数は、100万社を超えている。
近年は様々なプロジェクト管理ツールが台頭しており、グーグルやドロップボックスはドキュメントの保管に用いられている。また、スラック(Slack)のようなコミュニケーションツールも広く利用されている。フォーブスの「Cloud 100」リストに選出されたAsanaは、これらのサービスをつなぐ役割を果たし、ビジュアル化されたプロジェクト管理ツールでチームの生産性を高めている。
FarinacciによるとAsanaはグーグルやスラックとセットで用いられることが多く、それらの頭文字をとって「GAS」と呼んでいる。
Asanaは企業のプロジェクト管理において、目標設定の要となる役割を果たす。各チームはAsana上にタスクと締め切り日を設定、コメントを見ながら進捗状況を管理できる。リモートワーカーや外部の契約社員の参加が増えるなかで、Asanaはコラボレーションを促進し、生産性を高めるツールとなる。
東京オフィスも来年には設置
今年10月にAsanaは大手企業向けのツールを拡充した。当初はシリコンバレーのスタートアップが主要顧客だったが、テック企業が顧客に占める割合は今では20〜30%程度だという。業種を問わず、規模の大きな企業の利用を促進するために、Asanaはマネージャー層が一つのダッシュボードから、複数プロジェクトの管理ができるポートフォリオページを設置した。
この分野では競合企業も台頭しており、時価総額190億ドルを誇るアトラシアンや、時価総額26億ドルのSmartSheetなどの上場企業がいる。また、Airtableのような新興勢力も市場を広げようとしている。
しかし、FarinacciはAsanaの将来を楽観している。ここ2年で同社は海外での売上を伸ばし、欧州でのオペレーションを開始後は、海外売上が全体の50%を突破する勢いだ。
新たな調達資金で、同社は海外事業をさらに活性化させる。欧州ではドイツのフランクフルトのデータセンターに追加投資を行い、アジア太平洋地域での投資も拡大する。Asanaは間もなくオーストラリアに初のオフィスを開設し、来年には東京にも進出を果たす計画だ。
拡大を続けるAsanaだが、IPOはまだ視野に入れていないという。同社は売上額を公開しておらず、現状では黒字化を果たせていないという。Farinacciによると、現在は規模の拡大に注力し、職場の生産性を高めるという理念を追求している段階だという。「生産性という課題は、あらゆる企業で避けては通れないものになっている」と彼は話した。