──「選ぶ基準」についてはいかがでしょうか?
アカツキの「選ぶ基準」は、能力よりも人格とスタンスを重視しています。能力は高いけれど人格的にダメな人は、絶対に採用しません。
人格というのは、いくつか要素があります。まず大前提は「いい人」であること。グーグルでいうところの「Don’t be Evil. Do the Right Thing.」でしょうか。その上で、自分の人生は自分で生きたいという「自律心のある人」。
アカツキは、基本的には人をコントロールしたくない、自主自律を前提とした会社です。会社はプラットフォームであり、場であるという考え方を持っています。したがって、誰かの指示を待つ人よりは、「自律心」をもって自由に動ける人がフィットします。
まとめると、人格的には「いい人」で「自律心のある人」を選ぶようにしています。
次に、スタンスにおいて重要視しているのは、まずは「対自分力」。自分を変えて成長していきたいという意志です。次に重要なのは「対課題力」。これは、課題と向き合う際のスタンスです。そして最後に「対人力」。どう人と向き合うかのスタンスです。
この3つのスタンスを重視して、採用する人を選ぶようにしています。
「ロジカル」と「エモーショナル」を統合させる組織運営
──能力よりも人格やスタンスを重視するようになったきっかけは何でしょうか?
能力重視で採用して、組織崩壊を招きかけたことがありました。能力的に優秀な人が集まれば結果が出るはずなのに、実際はそういかなかったんです。
組織というのは因数分解できないもので、「要素を集めたらこうなる」ものではなく、「要素間の関係性も含めてのシステム」です。この関係性を経営者がいかに理解しているかが重要です。
「うちの会社はロジカルな組織」と割り切るのは簡単。逆に「エモーショナルな組織」と割り切るのも簡単。難しいのは「ロジカルとエモーショナルを統合させる」こと。この関係性を統合させられる経営者はすごいと思います。
──優秀な経営者は「感じられる」経営者という話に通ずるものがありますね。
そうですね。一般的に、人はロジカルな方向に引っ張られやすい。ロジカルなものは誰でも見えるからです。でもエモーショナルなものは見えない。本当に素晴らしい経営者というのは、そういった目に見えないものが見えている人だと思います。
会社において、見た目の事業の好不調や存続はもちろん大事だけれど、売上や利益は一時的なものです。その反面、最後まで残るのが「人」であり、一番残さないといけないのも「人」です。このエモーショナルな部分がないと、会社には何も残りません。
事業が変わっても、メンバーが会社の文化や想いに共感している状態を続けること。そのために、人格やスタンスがマッチした仲間を集めること。これが組織をつくるうえで、最も重要なことだと思います。
連載 : 起業家たちの「頭の中」
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