経済・社会

2018.11.30 15:00

侍から葡萄王へ 13歳で英国に渡りワイナリーで成功した長澤鼎とは

開国か攘夷かで揺れ動いていた幕末。欧米列強の進出を目の当たりにした日本の中には、彼らの文明や技術、知識を取り入れために海外へ視察団を送り出す藩も存在した。
 
薩英戦争で西欧諸国の海軍火力と技術差を痛感した薩摩藩もその一つ。欧米の文明と技術を取り入れるために、若い藩士たちを幕府に知られないよう、密航でイギリス留学に送り出した。後にカリフォルニア州サンタローザにワイナリーを開き、実業家として成功した長澤鼎、本名磯永彦輔もその一人だ。
 
薩摩藩の洋学校である開成所に入学し英語を学び、成績優秀だった長澤はメンバーに選ばれ、13歳でイギリスに渡る。ほかの留学生はロンドン大学に入学したが、長澤は入学年齢に達しておらず、グラバー商会のトーマス・グラバーの実家からグラマー・スクールに2年間通った。

藩財政の悪化でほかの留学生は帰国するが、思想家トーマス・レイク・ハリスと出会った長澤は1867年に渡米。1871年にアメリカ在住宣言。ブドウ栽培とワイン醸造に従事しながら暮らし、やがて自らのワイナリーを開きワインビジネスで大いに成功した、知られざるイノベーターの一人だ。


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文=松尾直俊

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