ビジネス

2018.11.15

「ゼロイチ」時代 破壊的イノベーション競争は始まっている

クオンタムリープ代表取締役 出井伸之氏


これまでの日本は、既存のビジネスモデルを維持し、改良しながら発展していけばよかったかもしれないが、これからは0→1も生み出し、1→100も日本なりに行っていかなければいけないという時期にきている。日本は、“硬直”を溶いて動かなければならない。

世界では、すでに様々な変革が起きてきている。ハードの企業がソフトの企業と提携して新しい在り方を模索したり、アリババが展開する生鮮販売のフーマーでは、最近中国でよく聞くOMO(Online merges with offline、オンラインとオフラインの融合)が実践されている。大企業も、今の時代に合った0→1を生み出そうとしている。

今後、ますます技術の進化スピードが速くなる。それに伴い社会全体の変化も早めていかなければならないだろう。そうした中で、社会的ニーズを掴み、どんどん新しいものを創っていかなければいけない。

クリエイターになり、アドベンチャーでいこう

0→1に関する本は数多くあるが、印象に残っている本が2冊ある。まずは、米国のオンライン決済サービス・ペイパル創業者が書いた「ZERO to ONE」(ピーター・ティール著)。この中には、ハッとさせられる言葉がある。

「新しい何かをつくるより、在るものをコピーする方が簡単だ。おなじみのやり方を繰り返せば見慣れたものが増える、つまり1がnになる。だけど僕たちが新しい何かを生み出すたびに、ゼロは1になる」

「人間は、天から与えられた分厚いカタログの中から何かを選ぶわけではない。むしろ僕たちは新たなテクノロジーを生み出すことで、世界の姿を描き直す。それは幼稚園で学ぶような当たり前のことなのに、過去の成果をコピーするばかりの社会の中ですっかり忘れられている」

そしてもう一つは、日本でビジネスイノベーションに成功した伝説のゲームクリエイター、コーエーテクモ代表の襟川陽一氏の著者。「0から1を創造する力」(シブサワ・コウ著、ペンネームで執筆)には、戦国時代をテーマとした歴史シュミレーションゲーム「信長の野望」を生み出し大ヒットさせた発想術が列挙されている。

破壊的イノベーションを生み出す社会

0→1を生み出すのはクリエイティブクラスで、新しいものや正解のないものをどんどん創り出していくのは、クリエイター的発想だ。これから必要なのは、改良イノベーションではなく、ディスラティブ(破壊的)イノベーションであり、よりクリエイティブにならなくてはいけない。

今と同じ社会がいつまでも続くと思っている人が多いが、歴史を振り返るとそうではない。移動が馬車から車になり、真空管が半導体に置き換わるなど、これまで何度も破壊的なイノベーションは繰り返されてきた。今ある技術は古くなり、新しい技術による新しい社会が生まれていくことは避けられない。しかもそれは、倍速のスピードで訪れる。

クリエイティブな感覚を養うには、子どもの教育も大きく変えていく必要がある。例えば米国では、教えられるエデュケーションではなく、自発的に学んでいくラーニングと組み合わせたスタイルが注目されている。

子どもの頃から失敗を恐れず、破壊的イノベーションにアドベンチャー精神で臨むことのできる、“0→1を生み出す社会”を早急につくっていかなくてはならない。世界中でその競争は始まっている。

「Z」はアルファベットの終わりで、この連載も終了するが、「0」は始まりの意味も持っている。これから新たなことがスタートすると思うと、とてもわくわくする。

この連載を読んでくださった皆さん、さあ、これからがアドベンチャーだ!

The IDEI Dictionary 〜変革のレッスン〜
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インタビュー=谷本有香 構成=細田知美 写真=小田駿一 取材協力=Quantum Leaps Corporation 撮影協力=Union Square Tokyo

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