サービスが利用可能なエリアは、私有地であるロンドンの「クイーン・エリザベス・オリンピック・パーク」に限定されている。Birdの英国事業を統括するRichard Corbettは「テクノロジーの進歩は常に、法律の先を行っている」と述べた。
「現状で我が社がサービス展開を許されたのは、空港や大学、企業のキャンパスや公園のみで、土地の所有者の許可を得ることが必須となっている」
Birdはオリンピック・パークでのサービス開始にあたり、50台の電動キックスクーターを用意した。料金は1台あたり1ポンド(約150円)で、1分あたり約23円がかかる。同社は今後の需要が高まれば、最大で100台まで車両を増加させる許可を得ているという。
「これは、英国における試みの第一歩だ。トライアルを重ね、Birdのサービスがいかに有効なものであるかを広く知らせていきたい」とCorbettは述べた。オリンピック・パークでの試みが成功すれば、今後は地元の大学などでの利用も想定できる。
しかし、Birdのトライアルは法の穴をついたものであり、サービス範囲は私有地のみに限定されている。これは、同社にとって決して好ましい状況とはいえない。乗車中に公道をまたぐ場合は、利用を中止することを求められる(ただし、多くの利用者はこの規則を無視するだろう)。
また、利用可能エリアの外に出た場合は、GPSを利用したジオフェンスが稼働し、電動スクーターを人力で押して動かす必要がある。さらに、利用時間は午前7時から午後9時に限定されており、地元のサッカーチーム「ウェストハム・ユナイテッドFC」がロンドンスタジアムで試合を行う際には、利用できない規約になっている。
つまり、英国でのBirdの立ち上げは、妥協の産物なのだ。
英国以外の欧州諸国で、Birdは急速に支持を広げている。最初に進出したのはパリで、ブリュッセルやウィーン、アントワープやチューリッヒ、マドリードでも好評だ。これらの都市でBirdは、ラストワンマイルの交通手段を提供するサービスとして、数万人以上の利用者を獲得している。
Birdの企業価値は20億ドル(約2260億円)と算定されている。世界で210万人が登録し、乗車回数は累計で1000万回を超えている。
しかし、EU離脱を控えた英国でBirdは古すぎる法規制の壁に直面した。競合の「Lime」も同様な困難を抱えている。今回のオリンピック・パークでのテスト版の開始は、利用者に満足を与えないかもしれない。しかし、同社が今後、英国でのサービス拡大を図る上で、まず必要なのが利用者の不満なのかもしれない。