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2018.11.05

ソフトバンク孫社長、サウジ事件に「強い遺憾」も投資は継続表明

ソフトバンクホームページ「2019年3月期 第2四半期 決算説明会」より

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は11月5日、2019年上半期(4-9月)の決算説明会で、トルコのサウジアラビア総領事館でサウジ人のジャマル・カショギ記者が殺害された事件について「強い遺憾の意を示したい」と述べる一方、サウジアラビアからの投資を継続することを表明した。

ソフトバンクグループが運営する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」は、サウジアラビアのムハンマド皇太子の後ろ盾で、サウジの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」から450億ドル(約5兆1000億円)の投資を受け、共同運営している。

ムハンマド皇太子には記者の殺害に関与していたとの疑惑が持ち上がり、皇太子と親密な関係にある孫氏が今後もサウジアラビアからの投資を継続するかどうかが注目されていた。

孫氏は、決算説明会の冒頭、「おそらく多くの人々の関心があると思いましたので」と切り出し、サウジアラビアの記者殺害事件について触れた。

「今回の事件は決してあってはならない、大変に悲惨な事件であったと認識しております。これはカショギ氏一個人の大切な人生ということに加え、ジャーナリズム、言論の自由に対する大変な問題を提起するものでありました。そのような意味で私どもはこの事件に対して強い遺憾の意を示したい」

孫氏はまた、10月23〜25日にサウジアラビアで開催された「未来投資イニシアチブ」への参加を取りやめたが、政府高官と接触したことを明かした。

「先日、サウジでイベントがありました。そのイベントに私は参加を取りやめました。しかし、サウジには行ってまいりました。サウジの政府高官の皆様に直接お会いして、私どもの懸念をしっかりとお伝えする目的もありました。ぜひ事件の真相が1日も早く解明され、責任のある説明がなされることを心から願っております」

孫氏はサウジアラビアに対し、事件の真相解明を求める一方で、サウジアラビアとのファンド共同運営の継続に意欲を示した。

「私どもはすでにサウジの国民の皆様から投資に関わる資金をお預かりしております。この資金はサウジ国民の皆様にとって大切な、オイルにのみ頼ることのない経済の多様化という責務を負った資金であります。このような悲惨な事件があったのは事実でありますが、私どもは、サウジの国民の皆様の将来に対する責務を、背を向けることをなく果たすべきと思っております」

ソフトバンクは同日、2018年上半期の営業利益が1兆4207億円と、前年同期と比べて62.4%増となったと発表した。そのうち、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の事業利益は6324億円を占めている。

文=久世和彦

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