米ドラマ「God Friended Me」が描く、絶望的な社会の希望

主演のブランドン・マイケル・ホール(Photo by Slaven Vlasic/Getty Images)

米CBSでこの秋始まった「God Friended Me」は画期的なドラマだ。何しろ主人公の黒人青年は無神論者なのである。

近年、アメリカのテレビドラマでは多様性がより重視されるようになっているが、黒人の信仰に関しては未だに一面的なステレオタイプが存在する。それは教会で頭を揺らし、足を踏み鳴らすキリスト教信者のイメージだ。そんな中、「God Friended Me」は黒人の登場人物がさまざまな形で信仰と向き合う姿を描く。

物語の主人公は、牧師の息子でありながら、無神論を説くポッドキャストを配信するマイルズ(ブランドン・マイケル・ホール)。

ある日、神を名乗るアカウントからフェイスブックの友達申請を受けたマイルズは、いたずらだと思いリクエストを削除するが、偶然とは思えない不思議な出来事が次々に起き始める。やがてマイルズは神の正体を突き止めるため、神が友達レコメンドした人々に会い、図らずも彼らの人生を大きく変えていく。

「Touched By An Angel(原題)」(1994年から2003年までCBSで放送された人気ドラマ。天使の主人公が悩める人々を導くストーリー)を彷彿とさせる手法で、信仰を持つ人にも持たない人にも希望や考えるきっかけをもたらす作品だ。

ジョー・モートン演じるマイルズの父親が、ドラマや映画の黒人牧師に多い、激しい憤りに満ちた説教をするタイプではなく、比較的穏やかな牧師として描かれている点も見逃せない。

全米黒人ジャーナリスト協会の大会で行われた本作の試写会において、主演俳優のホールは「この番組の目的は対話を生み出すことだ。私たちには口火を切ることができる」と語った。

人は信じることでしか生きられない

マイルズ役を演じるにあたり、ホールは自身の経験や信仰を深く掘り下げたという。「The Mayor(原題)」や「Search Party(原題)」などのドラマで知られるホールは、南部のサウスカロライナ州で牧師の母親に育てられ、ニューヨークのジュリアード音楽院で演技を学んだ経歴を持つ。

「亡くなった祖母は、人は信じることでしか生き続けられないと言っていた。(これまでの人生において)私も神と自分の関係を見つけ出す必要があった」とホールは話す。マイルズは保守的な層には受け入れられにくいキャラクターかもしれないが、物議を醸すドラマも時には必要だとホールは考えている。

試写会場に集まった信心深い人々や好奇心旺盛な人々からは、ドラマに対する様々な感想が寄せられた。そのうちのいくつかは、今の絶望的な世の中にも希望を見出すことができたというものだった。涙を流す人も大勢いた。また、自身の信仰について改めて考えさせられたという人もいた。

13話からなる第1シーズンの展開について、ホールは詳細を明かせないとしながらも、次のように語った。「主人公たちはこの先も答えを探し続ける。誰が神なのかという問いではなく、不安に満ちたこの社会で私たちはどうすれば対話や希望を生み出せるか、という問いに対する答えをね。そのようなテーマに関心がある人にとっては、興味深い展開が待ち受けている」

「God Friended Me」は9月30日より毎週日曜の夜に放送中。マイルズの親友で女性にモテる明るいオタクを、映画「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」でデビューしたインド人俳優スラージ・シャルマが演じるなど、多様な人種で構成されたキャストも見どころだ。

編集=海田恭子

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