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2018.10.19 06:30

1日で5兆円を売る中国「独身の日」 東南アジアへも波及へ

2015年のイベントの様子。アリババ創業者のジャック・マー(Photo credit should read Feature China / Barcroft Media / Barcroft Media via Getty Images)

中国で「独身の日」と呼ばれるEコマースの祭典が、今年も11月11日に開催される。このイベントは、1990年代に南京大学の学生たちが、恋人のいない学生のための集まりを開いたのがルーツだとされている。11月11日は1が4つ並ぶことから、シングル(独身者)であることを祝福するのにふさわしいと考えられたという。

その後、アリババは2009年から同社のTmallで独身の日のショッピングセールを毎年開催するようになり、競合のJD.comも加わって国民的イベントとして定着した。Eコマース企業らはこの日、恋人の居ない人たちに呼びかける。「一緒に時間を過ごす人がいないのなら、ショッピングを楽しみましょう」と。

独身の日を控え、中国のブランドは6カ月から8カ月も前から準備を進めている。11月11日の一日だけで、年間の25%に相当する売上が期待できるのだ。2017年のアリババの独身の日の取引額は250億ドル(約2.8兆円)を突破し、JD.comの取引額も190億ドル(約2.1兆円)に達した。この2社の取引額だけで約5兆円に達したことになる。

中国におけるEコマースの取引額は、この日の一日だけで他の多くの国の一年分の額を上回る。年間のEコマース取引額が、中国の独身の日を上回る国は、中国以外に4カ国しかない。米国と日本、イギリスとドイツだ。

アリババは11月11日の前夜からカウントダウンイベントを開催し、お祭り気分を盛り上げる。また、ストリーミング中継には海外から豪華ゲストを招き、過去には有名俳優のダニエル・クレイグや、デビッド・ベッカムも参加し、視聴者数は1億5000万人から2億人を記録している。このイベントに伴い、新製品の発表イベントやファンイベントなども開催される。

独身の日に参加する小売業者やブランドは、この日限りの大幅な値引きを行うことが必須となる。また、大量の発注に備え、在庫を確保しておく必要もある。消費者らは、この日が年間を通じて、最もお得な買い物ができる日であることを熟知しており、高額な家電製品などを一気に買いそろえることも多い。

ここ最近、米中間の貿易摩擦のニュースが報じられているが、少なくとも今年の独身の日のセールスに影響が及ぶ心配はなさそうだ。米トランプ政権の関税引き上げ措置に対抗し、中国政府も米国からの輸入品の関税を引き上げたが、独身の日向けの商品は9月1日までに既に中国の倉庫に納品済みだ。また、米中の摩擦が原因の消費者らのボイコット運動なども、ほとんど起きていない。

昨年から新たに浮上したトレンドとしては、独身の日が中国だけでなく東南アジアにまで拡大したことだ。昨年の11月11日に、アリババ傘下の東南アジア最大のECプラットフォーム「Lazada」は大規模なセールを行った。また、台湾などでも同様の動きがみられた。

さらに、アリババやJD.comらは独身の日をEコマースだけでなく、リアル店舗のイベントと連動させる動きも活性化させている。

編集=上田裕資

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