そして、心理プロファイリングを行い、「カスタマイズされた情報」を意図的にフェイスブックのタイムラインなどに流し、投票結果を左右しようと試みた。そのCAでリサーチ研究員を務めたクリストファー・ワイリーは、3月に米下院の特別委員会で、投票操作の実態を証言した。
ワイリーは今、CAの世論誘導の手口の詳細を明かし、その危険にいかに対処すべきかを教えている。ワイリーがCAで担った役割は、かつての軍の情報戦術をデジタル時代に適応させたものだった。
「最初に適切なターゲットを見極めることが大事だ。そして彼らを心理的に弱体化させ、追い込んでいく」とワイリーはボストンで開催されたフォーブスの「30アンダー30」サミットの場で述べた。
まず最初に、フェイスブックの偽のプロフィールを開設し、ターゲットとつながりを構築する。意見に同調するコメントを発して、彼らと同じ考えを持つ人が多数いるという誤った認識を与える。ワイリーによると、人々を洗脳する過程で工作員らはリアルイベントも開催するという。1000名から2000名に招待を出して、地元のコーヒーショップに数十名程度が集まれば上出来だ。
「会場にでは、ネット上の妄想に過ぎなかったアイデアが、現実のものになる」とワイリーは話す。「集まった人々は自分と同じ考えを持ち、共通の事柄について語っている。これは大きなムーブメントが始まっているに違いない、と彼らは思うだろう」
こうやってオルタナ右翼のムーブメントは広がっていった。ワイリーがこの問題を世間に広く知らせようと決意したのは、この仕組みがテロリストの養成に用いられてしまう危険に気づいたからだという。
「このアプローチは様々な面で悪用が可能だ。情報戦争において、人々の自律性や主体性は無視される。彼らは人々の弱みにつけこんで、偽の情報を流し、誤った認識に導いていく」とワイリーは述べた。これは民主主義にとっての重大な危機といえる。