そう話すのは、ゴールドコーストにあるボンド大学の非常勤講師、ベン・ヘイデン=スミス。同大の起業学部やビジネススクールでスタートアップ関連の講義を受けもっている。
オーストラリアの中心都市といえば、シドニーかメルボルン。ビジネスでもスポーツでも、両都市は常にライバル関係にあり、スタートアップのエコシステムの成熟度でも群を抜いている。
そんな中、“永遠の3番手”だったブリスベン(クイーンズランド州)が最近、急速に力をつけてきている。
「人口はシドニーやメルボルンよりはるかに少ないですが、大学はブリスベンやゴールドコーストに結構ある。だからスタートアップが育つ土壌があるんです」とベン。ロボティクスやAI、さらには豊かな自然環境を活かしたバイオ・食品関連の産業が有力だという。
もっとも、まだ成功事例と呼べるスタートアップは出ていない。だがベンは「そのうち必ず出てくるはず。早ければあと1〜2年でそのときが訪れるかもしれませんよ」と期待を膨らます。
その兆しも見られる。今年2月には、クイーンズランド州に拠点をおく宇宙ロケット開発のスタートアップ、Gilmour Space Technologiesが、米NASAと提携を発表。同社は安価で環境にやさしいハイブリッドエンジンを使った人工衛星を飛ばそうとしており、米有力VCの500 Startupsなどから資金調達している。
ブリスベンのエコシステムを長年支えてきたのは、地元の起業家コミュニティだ。名門クイーンズランド大学のアクセラレータ「ilab(アイラブ)」からは、過去5年間で140社が巣立っていった。また2012年に開設されたコワーキングスペース兼アクセラレータの「River City Labs」はこれまで、700人以上の起業家を輩出してきた。
ilabのマーケティング担当者で、フランス出身のサミュエル・パヴァンはこう語る。「シドニーやメルボルンが注目されている間、ブリスベンの人たちは着々とプロダクトを作ってきた。こちらはイベントが少ないから、仕事に集中できる。それが良いエコシステムをつくるんです」