この日、川崎港に入港した自動車専用貨物船「バイオレット エース」の中に乗り込むと、そこは大型ショッピングセンターの駐車場のような構造。15〜20人で構成された「ギャング」と呼ばれるチームが、一糸乱れぬチームプレイでデッキに隙間なくクルマを並べていく。
ズラリと並んだ新型フォレスター同士の間隔は、前後わずか30cm、左右はなんと10cm(!)。大人の社会科見学としても、かなり見ごたえのある光景だ。
熟練ドライバーによる超絶の美技
もう少しスローモーションで再現してみよう。貨物船が接岸すると、船尾に設置されたランプウェイが降りてくる。ズラリと並んだフォレスターの運転席にドライバーが乗り込み、船積み計画に沿って船内に自走していく。
まずクルマを簡易的に並べた後、船内で熟練のドライバーに運転を代わる。ここからの作業が息を呑む展開だ。
熟練ドライバーたちは後ろを振り返りもせずに、スイスイとバックでクルマを次々を整列させていく。バックミラーや駐車支援装置は一切使わずに、誘導員が振る赤いランプだけを頼りにピタリと駐車位置に付けるのだ。
誘導員が運転席のドアを開けて、ドライバーが降り、最後にラッシングベルトで固定する。この約5000台分繰り返し、数時間で約5000台の車両がぎっしり船積みされた状態になる。
スバルが「船積み」を披露した理由
ところでなぜ、今回、スバルが新型フォレスターのお披露目にあたってこのような見学会を企画したのだろうか?
実は、日本国内で生産されたスバルのクルマの約8割が海外に輸出されている(2018年1〜7月統計参照)。2017年の生産台数は107万3057台と、アメリカ市場における快進撃のおかげで2年連続で100万台超えを達成し、米インディアナの工場の生産台数を増強しつつあるものの、ほとんどのスバルが“メイド・イン・グンマ”なのである。
だからこそ、スバルにとって「海外に輸出するクルマを船積みする」ことは、非常に重要なミッションといえるからだ。実際に、わずかな隙間でぎっしりとデッキに並んだ車両を眺めていると、こんな風に熟練の船積みがあってこそ、はるか遠い国までクルマを傷つけずに輸出できるのだなあ、と実感できる。