これを皮切りに、「攻殻機動隊」シリーズを手がけたプロダクションI.G(Production I.G)、「交響詩篇エウレカセブン」などで知られるボンズの両企業と包括的業務提携契約を締結。日本を牽引してきた大手アニメ制作会社とネットフリックスが手を結んだ。
『ハウス・オブ・カード 野望の階段』や『ストレンジャー・シングス 未知の世界』などのオリジナルドラマに加え、今後はより一層、オリジナルアニメに力を入れていくことが予想される。
先述した「DEVILMAN crybaby」やプロダクションI.Gと共同制作した「B: The Beginning」に加え、日本のOLを描いたショートアニメ「アグレッシブ烈子」などは、すでに日本のみならず世界中で広く話題になっている。
ネットフリックスがアニメコンテンツに見出した勝算は何か。また世界中で愛されるアニメを制作できる理由はどこにあるのか。 コンテンツアクイジション アニメディレクターの沖浦泰斗に話を聞いた。
クリストファー・ノーランがつくった「バットマン」の「デビルマン版」をつくりたかった
ネットフリックスの数多あるコンテンツの中で、最近最も話題になったアニメといえば「DEVILMAN crybaby」が挙がるだろう。
永井豪の人気漫画「デビルマン」が、『夜明け告げるルーのうた』『夜は短し、歩けよ乙女』などを手がけた湯浅政明によって、現代の世界と見事に融合。
動画ストリーミングサービスならではの表現を駆使した仕上がりに、世界中の視聴者が唸った。その結果は数字にも表れている。
「DEVILMAN crybaby」は実写も含めて日本のコンテンツの中で最も視聴された作品のひとつだったそうで、海外からも「画期的な作品だ」という感想が届くという。ここまでヒットした理由を、沖浦はこう読み解いている。
「悪魔が人間よりも先に地球に住んでいた種族だった、というサプライズな設定に加えつつ、現代的な要素を取り入れながら“今のデビルマン”として作り上げたこと。それが大きかったと思います」
2008年に公開された映画『バットマン』はクリストファー・ノーランがリメイクしたもの。昔からある作品を現代の人に向けて作り直すことで大ヒット。その「デビルマン」版を日本でつくりたい──アニプレックスの鳥羽洋典さんが発案したアイデアをもとに、「DEVILMAN crybaby」の制作がスタートしたという。
「人間の普遍性といった部分を抽出しながらも、現代のSNSの隆盛などをうまく利用して“噂”のシーンなどにつなげる。新宅洋平さんと永井一巨さんという、プロデューサー2名の多大な努力と、天才・湯浅監督の手腕によって、現代でも愛される作品ができたと思います」