グローバルに愛される日本製のアニメーションを作るために
「DEVILMAN crybaby」のヒットなど、少しずつネットフリックスオリジナルのアニメーションが世界的に評価されていく中で、社内でのアニメーションの立ち位置に変化などはあるのか。沖浦は言う。
「全世界で人気を集めているジャンルなので、全社的に力を入れていく方針は前からあり、番組の制作や調達には力を入れていました。最近はその上でマーケティングにも力を入れ始めています」
先日、ロサンゼルスで1年に1回行われる、約35万人のアニメファンが集まる国際的なアニメイベント「Anime Expo 2018」にネットフリックスがパネルを借りて出展。
オリジナルアニメの最新ラインナップの発表には約2000人の観客が集まったほか、アニメ「詩季織々」のワールドプレミアは満員御礼の状況だったという。
「もともと、パラマウントや20世紀フォックスといった名だたるスタジオの作品をプロモーションしていた人たちが、いまはネットフリックスのオリジナルアニメを本気で宣伝している。それがネットフリックスの面白さであり、こんな組織は他にないと思います」
世界で人気を集めるアニメーションを制作しているネットフリックスは、「B: The Beginning」などオリジナルアニメのグッズ制作も行っている。今後はコンテンツの制作以外にも、グッズやイベント、タイアップなど外部での展開なども視野に入れているのか。
「一部では人気が出すぎてオリジナルのグッズを作ったら飛ぶように売れた事例などはあります。ただ、ネットフリックスはあくまでユーザーに最高の視聴体験を届けることにフォーカスし続けます。それが原則です。もちろんアニメーションにはさまざまな展開方法があると思いますが、よそ見をせず、人々に良質なエンターテイメントを届け続けることだけを考えています」
CEOのリード・ヘイスティングスはよく「Don’t get distracted. Stay focused(よそ見をするな。集中しろ)」と社員に言うそうだ。
また、ネットフリックスではよく「we focus on what we are good at(自分たちが得意とする分野に資源を集中させる)」という言葉が社内で使われる。
その考えがあるからこそ、彼らはスポーツもニュースもやらない。得意なエンターテイメント作品に集中することで他との差別化を図り、自社の優位性を保っている。
「今年の1月にプロダクションI.G、ボンズと包括的な提携を結びました。優秀なアニメーター、優秀なプロダクションと一緒に、ネットフリックスオリジナルの良い作品をつくっていくことが主な目的です。短期間で制作をするのではなく、数年かけてアニメを制作していく。長期的な視点をもってアニメを作っていく。これがいまのアニメ制作チームのミッションです」